林業

Forest Industry

中部は良質な木材の生産地として知られている。上流から河口までの標高差が大きい木曽川流域は、その急峻な地形と、日本海と太平洋の特徴が交じり合う気候から、良質な木材(木曽材)の生産によって栄えてきた。

木曽材は良質な建築材として古くから重宝され、京都や伊勢、後には江戸へと供給されていく。そのため山林の開発の歴史も平安時代までさかのぼる。室町期以降には、木曽川・伊勢湾を使って木材を流送して伊勢内宮の遷宮材として搬出されるようになる。この木曽材の流通のためにも、時代に即した高度なインフラストラクチャーが不可欠であった。

木曽材は古くから良質な木材資源として知られていたが、本地域の木材が全国から脚光を浴びるようになったのは江戸期以降である。全国での近世都市の大開発がはじまり、木材需要は急激に増加していった。

当時の木材輸送のための主要なインフラは木曽川自体の流れであり、上流で伐採された木材は川の流れによって下流へと運ばれ、その後江戸や大阪といった一大消費地へと流通していった。しかしこの近世以来の流通システムは、明治期末期から大正末期にかけて、中央線の開通、水力発電所の開発とそれに伴う森林鉄道の敷設に伴い衰退し、流路から鉄路へと転換していった。戦後になると道路ネットワークの拡大とともに鉄路は道路へと変わり、さらには木材流通網のグローバル化にともない国内木材業は大きな変貌を遂げた。