前口上
「ドボ鉄目線の川番付を……」というリクエストを頂戴したので、「川はマイナーだけど、鉄道構造物ではそこそこ~超有名な川番付」を選んでみた。
新幹線や都市鉄道に使われている有名な構造物を期待した方々には大変申し訳ないが、定番ではなくむしろ「川展」の話題にもならないマニアックな川にポツンと存在する構造物ばかりである。
たとえば「あっかがわ」と聞いてピンとくる方は、プレストレストコンクリートの歴史に相当詳しい方だ。「安家川」と書いて「あっかがわ」と読むが、岩手県下閉伊郡岩泉町安家村を流れる二級河川で、岩手県内で完結し、流域に大きな町もないので、他県の方にはほとんどなじみのない河川名だと思う。しかし、その河口で安家川を跨いで架かる三陸鉄道の橋梁は、全国的にも4例しかない珍しいプレストレストコンクリート構造の鉄道トラス橋である。
鉄道は全国津々浦々にその版図を広げたが、山岳地や海岸部では険しい地形を克服するために特殊な設計の構造物を建設せざるを得なかった。このため、標準設計の構造物を多用した都市鉄道や幹線鉄道よりも、地方のローカル線に個性的で特殊な構造物が存在する。ローカル線の鉄道はどこも経営環境が厳しいが、知る人ぞ知る構造物の宝庫なので、「秘境駅」と同様にこうした構造物を観光資源としても活用できればと思う。
どこの川かは知らないけれど、構造物の名前を聞けば「ああ、あの日本で最初の……」とその姿がイメージできるようになれば、あなたも立派な「ドボ鉄」の達人である。
(小野田 滋)