山野を開墾し、都市を築いて、自然災害から暮らしを守る。自然の力をエネルギーに変え、電気・水道・交通・物流・通信のネットワークを地球に張りめぐらせる。
わたしたちの暮らしの営みを見つめると、そこには土木があります。土木は、自然の恵みと脅威のはざまに生きるわたしたちが、豊かで、あたり前の生活を送るために必要な環境をつくりだしてきました。
環境をつくり、それを未来の世代に受け継ぐためには、様々なテクノロジーを駆使する必要があります。高度な計測技術や巨大な建設機械など、非日常的なテクノロジーの躍動なくして、今のわたしたちの日常を維持することはできません。一方、社会に対する人々の思いや、土地に蓄積された歴史も、わたしたちの豊かで、あたり前の生活を実現する上で、重要な手がかりを与えてくれます。しかし、それらを見たり考えたりする機会には、普段なかなか巡り合うことができません。しかも、土木構造物は一旦できてしまえば、日常生活にうずもれてしまい、その役割や魅力に気付かされる機会もほとんどありません。
ドボ博は、わたしたちの日常に見え隠れする土木の知られざる世界を紹介し、見る人の想像力をかきたて、社会の現在と未来について考える場を提供するオンライン博物館です。土木が扱う構造物は巨大で、地形と一体不可分のものが多く、その中で絶えず人・モノ・情報がめまぐるしく移動するなど、まちなかの博物館で展示するのが難しいものばかりです。そこでドボ博では、「いつものまちが博物館になる」をキャッチフレーズに、地球全体を土木の博物館に見立て、独自の映像作品と土木図書館が所蔵するアーカイブを活用して、その世界に迫っていきたいと考えています。また、スマートフォンでドボ博をまちに持ち出していただき、現実と交錯する仮想空間の楽しみを味わっていただきたいとも考えています。
幸田露伴は『一国の首都』の中で、人が都市を愛し大切に思う気持ちが都市を善きものにする、と述べています。このことは、都市だけではなく、地域や国土全般にもあてはまることでしょう。わたしたちを取り巻く環境は、政治や技術に携わる者の技量だけでその良否が決まるわけではなく、そこに生きる人々の思いがあってはじめて善きものとなる。計画者が意図していなかった、使い方、見え方、思いの積み重ねが、都市や国土の未来を照らし出すことができる。
だからこそドボ博は、土木の世界をできるだけ多くの人に紹介し、すべての人が都市や国土に対する思いを育むことができる、ひらかれた場でありたいと考えています。
公益社団法人土木学会 土木図書館委員会 ドボ博小委員会 委員長 北河大次郎
(写真:西山芳一)
運営組織
公益社団法人土木学会 土木図書館委員会 ドボ博小委員会
運営の理念
一 地球全体を土木の博物館に見立て,現実と交錯する,魅力的な仮想空間を構築する。
一 専門の枠にとらわれることなく,文明とエンジニアリングの可能性を探究する。
一 社会の啓蒙や土木の広報に主眼を置かず,知的好奇心・想像力・遊び心に満ち溢れた展示を行う。
これまでの経緯
1994~2002 「土木学術資料館(神奈川県川崎市)」構想の検討
2000~2010 「仮想土木博物館」構想の検討
2014.11.18 土木学会創立100周年記念「土木デジタルミュージアム」オープン
2016.02.08 「ドボ博」プレオープン
2016.08.08 「ドボ博」オープン、「東京インフラ解剖」展開催
2018.02.08 「四国インフラ解剖」展開催、「土木と文明」展開催