東京インフラ018 豊海橋

「力強い鉄の美しさよ。」


隅田川に注ぐ日本橋川の末端に架かる震災復興橋梁。「質実を主とし外観を従とし・・・都市の面目を一新して威容あるものたらしめ(る)」とした政府の「帝都復興に関する根本方針」を、水平と垂直の明快な構成をもつ質実剛健な造形によって体現した。

若き日の川端康成は

「復興の東京市に、もし誇るべきものがありとすれば、第一番にこれらの橋である。これらの橋こそは、新しい都市美の花であり、近代感覚の虹である。」

と述べ、

「橋は、やつぱり船から見るのが一等美しいですね。橋の裏の鉄骨の組み合わせを水の上から見上げると、科学的な計算、力学的な構成 ━ さういつた、機械時代の近代感覚がほんたうに感じられます。・・・力強い鉄の美しさよ。」

と、橋の下からの眺めに妙味を見出した橋マニアであったが、彼のいう「力強い鉄の美しさ」を、端的に示しているのがこの豊海橋である。

永井荷風は、この機械時代の美の中に、近代の詩情を感じ取っていた。

「豊海橋鉄骨の間より斜に永代橋と佐賀町辺の燈火を見渡す景色、今宵は明月の光を得て白昼に見るよりも稍画趣あり。」

月夜を照らす水辺に映える近代の詩。同タイプの橋は、時を経て浜松町駅にも架設され(1983年)、新幹線や東海道線の流れを斜めから見下ろす新たな東京インフラ景観をつくりだしている。(北河)

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引用
「帝都復興ニ関スル根本方針」国立公文書館所蔵
荷風全集第21巻、岩波書店、1963.
川端康成全集第26巻、新潮社、1982.

種別 道路橋
所在地 東京都中央区
構造形式 鋼製 フィーレンデール桁橋
規模 橋長46m
竣工年 1927年
管理者 東京都
設計者 国(内務省)
備考 土木学会田中賞(浜松町駅構内跨線人道橋)
設計図建設写真
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