パート13 “土木の「試験施工」の話”
千登世橋が日本初の立体交差のインターチェンジって言われてますけど、歩車分離のような設計思想って、それ以前にあったんですかね?上野駅とどっちが古いんですかね。
上野駅は昭和6年ですね。
正確に言うと、立体的な道路で一番古いのは、外苑橋なんですよ。
外苑橋ってどこにあるんですか?
JR千駄ヶ谷駅、大江戸線国立競技場駅近くにありますよ。下を通っているのが外苑西通りですね。
東京体育館の近く、現在建設中の新国立競技場の近くでもありますね。
ラーメン式の橋なんですけど。
あれ、昔の橋なんですか??
昔の橋です。あれは実は御茶ノ水橋を架ける時のモデルなんです。いわば試験施工みたいなものです。
えーーー!そうなんですね!!!
立体交差の発想は、橋の技術者というより道路技術者のものですかね?神宮外苑は、藤井真透など道路工学を牽引した技術者が何人か関わってますし。
橋の技術者は、東京市の技師の小池啓吉ですね。あれが道路同士の立体交差の第1号です。千登世橋は、幹線道路と幹線道路の立体交差の第1号ですね。
外苑橋の完成はいつごろですか?
昭和3年ですね。
試験的に架ける、みたいなものは他にもあるんですか?
私が知っているのは、パイプアーチで構成している天草五橋の松島橋(※上天草市HPの紹介ページへ)。すごい綺麗な橋なんです。そのモデルを、多摩川の青梅の和田橋って橋で実験施工したんです。みなさん知らないでしょ??はじめてパイプアーチで作って。それでうまくいったんです。
そうなんですか!
あとは、斜張橋の木場公園大橋。流動化コンクリートを使ってるんですが、あれって、日本ではじめて使ったんですね。バイブレーターをかけなくても良いやつです。
ときどき、作業性を高めるために早強ポルトランドセメント(※1)に流動化剤を添加して・・・、なんて話を聞くことがあります
さらに主塔周りの型枠に、普通の木の型枠ではなくてガラス繊維が入ったものを使っているんです。そこに流動化コンクリートを流し込む。この2つの技術が、明石海峡大橋のアンカレッジ(※2)に使われている。
これと明石海峡大橋のアンカレッジまでつながっていくんですね!
そこまで注目してみたことはなかったですね。できたのはいつごろですか?
平成3年のおわりですね。
明石海峡大橋の少し前ですね。完成が、ということですけど。だから設計していたのは・・・、
設計していたのは、昭和62〜3年だと思いますね。
【次回へつづく】
注釈
※1 一般のセメント(普通ポルトランドセメント)に比べて短期間で高い強度が発現するようにしたセメント。(セメントの種類については、一般社団法人セメント協会のページが参考になります)
※2 吊橋のケーブルにかかる力を大地につたえるため、吊橋の両端に設置される大きなコンクリートの塊のこと。(吊橋の主要部材の名称については、一般社団法人日本橋梁建設協会のページが参考になります)