ドボ博 座談会 パート19

工場を愛でる

zadankai
「東京インフラ解剖」といきなり言われても、何の事だかよくわからない。そんな方にも、東京インフラを見る「とっかかり」を作ってもらうため、独自のこだわりをもつ専門家による、マニアックな座談会を行いました。壁マニア、地形マニア、橋マニア、鉄道マニア・・・。これを読めば、きっとあなたなりの東京インフラの見方が見つかるはずです。

 


 

パート19 “工場を愛でる”

北河さん

じゃあ話題を変えて、工業地帯。八馬さんどうでしょう。工業地帯の魅力とは?

一般人目線な渡辺さん

メインが来た(笑)

北河さん

今回は、京浜・京葉工業地帯を、<肝臓>にたとえています。工業地帯って、肝臓みたいにいろんな機能があるので。

東京インフラ063 京浜・京葉工業地帯

工業地帯のことなら八馬さん

工業地帯の魅力ですか・・・。

北河さん

港でもいいですよ。

港にもくわしい八馬さん

港から話した方がよさそうですね。近代港湾って、都市のバックヤード機能が集積しているわけですよね。物流の、海運のやりとりなんで。だから、そこに当然、重工業的な産業も立地するし、物流の拠点も立地する。


カメラマンの大村さん

まあ、そうですね。

港にもくわしい八馬さん

地方都市で、港めぐりの船があったら、必ず乗るんですけど。そうすると、だいたい港の活動や産業が見えてきます。
例えば、富山では、アルミのインゴットが置いてあるわけですよ。隣接する火力発電所では、石油・石炭・天然ガスが使われていて、それぞれの荷役が見られるわけです。つまり、アルミ産業が盛んだから、電力をすごく使うと。

北河さん

そのへんがつながってくると、港や工業地帯も面白いわけですね。

東京インフラ079 東京港

港にもくわしい八馬さん

東京だったら、いま写真出てるけど、ガントリークレーンが、キリンさんたちがいっぱいいるんで、物流の拠点っていうのがわかりますよね。もっと南に行くと、空港があって、その先が重工業地帯。まあ東京は、ちょっとデカすぎるけど。

北河さん

東京は、工業的なところと、周りの近代的なビルのコントラストがいいですよね。

港にもくわしい八馬さん

そこのコントラストは、面白いですね。僕も結構好きなのは、キリンが群れている向こう側に、都市がブワーって、高層ビルが広がっているっていうのが。かなりインパクトのある風景だなって。

ドボク素人な大山さん

この景色って、昔からですか。富山だったら、北前船でコンブとか運んでいる、っていう時代もあったわけですよね。

港にもくわしい八馬さん

今の風景になったのは、でっかい船が着くことができる岸壁ができてからです。

北河さん

クレーンがずらっと並ぶのって、戦後じゃないですか。

港にもくわしい八馬さん

クレーンはそうですね。

鉄道のことなら小野田さん

昔のイメージでいうと、工業地帯はだいたい煙突が並んでてね。煙がモクモク出ている、っていうイメージなんだけど、今はそうじゃないですよね。

工業地帯のことなら八馬さん

公害問題で、すっかり排煙は出せなくなったんで。

鉄道のことなら小野田さん

やっぱり、煙突に工場らしさを感じるな。ちょっと工場のイメージが古いのかもしれないけど。

カメラマンの大村さん

千住のおばけ煙突は、なんで内陸にあったんですかね。あれは火力発電所ですよね。

おばけ煙突が見える風景 (生活情報センター「東京下町100年のアーカイブス―明治・大正・昭和の写真記録」から引用)

 

鉄道のことなら小野田さん

当時は都心から離れていたからかな? 鉄道省も、その昔は、赤羽や蒲田の先の矢口に火力発電所があった。

カメラマンの大村さん

火力発電所=海沿い、っていう印象ですけど。

北河さん

昔、火力の燃料は石炭ですよね。

橋に詳しい紅林さん

石炭をどこかから運んでくるんですね。

工業地帯のことなら八馬さん

常磐炭田ですかね?

北河さん

常磐炭田だから千住。それも一つあったかしれませんね。

工業地帯のことなら八馬さん

常磐線は、基本的に常磐炭田と日立のための線路。常磐炭田の石炭は、質が良くて、大量に出たから。それを都心の方に持ってくる、ということが行われていたのかもしれませんね。隅田川の舟運もあったでしょうけど。

鉄道のことなら小野田さん

常磐線は、全線じゃないけど、けっこう早い時期から複線だったからね。

工業地帯のことなら八馬さん

そういう意味では、都心に近くて、まちのキワに石炭の火力発電があった、というのは頷ける。

北河さん

このおばけ煙突も、今はありません。煙突っていうのは、消えゆくビルディングタイプなんですかね。

カメラマンの大村さん

いや、まだ結構ありますよ。清掃工場とか。

工業地帯のことなら八馬さん

火力発電所の煙突も、まだ健在です。環境に影響がないように、無害化されたガスを出しています。勘違いされやすいのですが、工業地帯でモクモクしているのは、たいてい水蒸気ですからね。

駅といえば田村さん

水蒸気なんだ。

カメラマンの大村さん

煙突で思い出したのは、首都高の換気塔。新しい煙突ですよね。

ドボクマニアの八馬さん

そうですね。新しいタイプですよね。

首都高中央環状線の換気塔(撮影:大村拓也)

 

首都高中央環状線の換気塔(撮影:大村拓也)

ドボク素人な大山さん

煙突は土木なんですか、建築なんですか。

カメラマンの大村さん

あの中に人が滞在しない、っていうことを考えると、土木ですかね。

 

橋に詳しい紅林さん

品川線の換気塔は、建築基準法は適用しなかったと思いますよ。建築物ではない、と。

ドボクマニアの八馬さん

そう考えると、煙突デザインってのも、ドボクの新たな可能性かもしれませんね。

 

【次回へつづく】

 

 


 

座談会アフタートーク

■コンテナターミナルの仕組みを知る

今回話題となった港湾。コンテナターミナルのガントリークレーンが多くそびえ立つ景色を見たことがあるのではないでしょうか。
物流、特に輸出入の拠点にもなるコンテナターミナルは実際にどのようなことが行われているのでしょうか??

東京港を管理する東京港埠頭株式会社のHPには、コンテナ埠頭の作業や施設について詳しく紹介されています。
興味のある方は一度のぞいてみてはいかがでしょうか??

http://www.tptc.co.jp/guide/container/work

 

■グッドデザイン賞を受賞した換気塔

今回の座談会で煙突の話題が出てきましたが、実は高速道路の換気塔にはグッドデザイン賞を受賞したものがあります。
2008年には中央環状線(C2)、2017年には首都高神奈川横浜北線(K7)でそれぞれグッドデザイン賞を受賞しています。

換気塔は都市景観に与えるインパクトが大きいのですが、デザイン的に配慮されている視点をもとに見てみると
また違った印象になるのではないでしょうか?

http://www.g-mark.org/award/describe/34581

http://www.g-mark.org/award/describe/45746

 

 

 


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