ドボ鉄097瀬田川での再会

絵はがき:東海道新幹線・瀬田川橋梁(滋賀県大津市)


 名神高速道路と東名高速道路、東海道新幹線はともに関東と関西を結ぶ新たな日本の大動脈となり、高度成長時代を支える交通インフラとして陸上輸送に革新をもたらした。鉄道は自動車に比べて急勾配や急曲線が苦手な交通機関なので、路線選定の制約条件が厳しく、特に新幹線は在来線との接続駅についても考慮しなければならなかった。しかし、両者とも目的地は同じなので、東海道新幹線と名神・東名高速道路は、お互いに付かず離れずの関係を維持しながら、関東と関西を結んだ。
 今回紹介する米原~京都間の瀬田川橋梁は、両者が並走する数少ない区間のひとつで、名神高速道路の近江大橋に並行して、約40m上流側に東海道新幹線の瀬田川橋梁が架設された。彦根付近で並んだ両者は、新幹線が琵琶湖側に沿って京都へと至ったが、名神高速道路は山側にルートを求め、近江八景で知られる瀬田の唐橋の下流で再会した。東海道新幹線の瀬田川橋梁の径間割は、先行して完成した名神高速道路に合わせたが、河川管理者(建設省)側からはさらに橋脚の断面を薄くするよう要求があったとされる。
 ちなみに、東海道新幹線の東京~新大阪間は、1964(昭和39)年10月1日に全線同時開業したが、名神高速道路の最初の開業区間である栗東(りっとう)IC~尼崎ICはそれに先立って1963(昭和38)年7月16日に開通した。名神高速道路の小牧IC~西宮IC間が全通したのは1965(昭和40)年7月1日、東名高速道路の東京IC~小牧IC間が全通したのは1969(昭和44)年5月26日のことであった。
 その後、新幹線と高速道路(高規格幹線道路)は、全国へそのネットワークを拡大し、日本の重要な交通インフラとして機能し続けている。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2021年7月号掲載)

 

この物件へいく


Q&A

文中の専門用語などを解説します

Q

東海道新幹線と名神高速道路で曲線や勾配はどのくらい違うんですか?

A

どちらも一部の区間で例外がありますが、基本的に東海道新幹線の最急勾配は15‰、最小曲線半径は2,500mです。これに対して、名神高速道路では最急勾配は10%(100‰)、山岳地の最小曲線半径は260m、丘陵地の最小曲線半径は400m、平坦地の最小曲線半径は580mを基本としていますから、鉄道の在来線に近い値となります。(小野田滋)


”瀬田川橋梁(滋賀県大津市)”番外編

師匠とその弟子・小鉄が絵はがきをネタに繰り広げる珍問答

小鉄

東海道新幹線と高速道路が並んでいる場所は、ほかにもありますか?

師匠

木曽川橋梁があるぞ。新幹線の東側にほぼ並行して名神高速道路が走っているから、新幹線の車窓からもよくわかる。

小鉄

あっ、この絵葉書の場所ですね。自動車が止まっているように見える場所だから、いつも気になってました。

師匠

新幹線が3倍くらい速いから、自動車も静止画のように見えるな。

小鉄

新幹線と交差する場所はありますか?

師匠

何箇所かあるぞ。

小鉄

でもあまり気がつきませんね。

師匠

交差する時間はあっという間だから、並走よりも気がつかないかもしれないな。

小鉄

この向日町架道橋の絵葉書では、東海道新幹線が名神高速道路の上を跨いでますね。

師匠

東海道新幹線が高速道路を跨いでいる場所は、木曽川橋梁の北側の上中架道橋とここだけだ。

小鉄

東名高速道路ではないんですか?

師匠

東海道新幹線と東名高速道路は静岡県の富士市~掛川市あたりで何度か交差するが、すべて東名高速道路が新幹線の上を跨いでいる。

小鉄

つまり名神高速道路は東海道新幹線よりも先に完成したから新幹線が上を跨ぐことになって、東名高速道路は東海道新幹線よりも後に完成したから高速道路が上を跨いだってことですか。

師匠

地形条件なども絡むから話は単純ではないが、結果的にそうなったことになる。

小鉄

上下関係は複雑ですね。

師匠

ドボ鉄69回でも話したが、そこを深掘りすると鉄道への興味がひとつ増えることになるぞ。

学会誌・東海道新幹線特集瀬田川橋写真(p.4/写真22)
Back To Top