川展 日本河川風景二十区分 ―国分かれて山河似る―

区分:⑥飛騨山脈

区分:⑥飛騨山脈

区分:⑥飛騨山脈
特徴:土砂生産量が日本で最も活発
扇状地では網状流路が形成され、流量の割に川幅が極めて広い。
平地部や三角州はなく、扇状地のまま海に流れ込んでいる。
湧水が多い。
川原にごろごろとした石
河川:姫川、黒部川、常願寺川

(1)急な扇状地が一気に海に突っ込む

知花武佳 河川研究者
区分⑥飛騨山脈からはようやく糸魚川―静岡構造線を越えて、西南日本に入ります。飛騨山脈というのはいわゆる北アルプスですね。日本屈指の急流河川の黒部川、常願寺川が並んでいます。この区分を分けた理由ですが、姫川もそうですけれど扇状地が海まで突っ込んで、河口まで川原に石がある点です。しかし、隣の区分⑦の神通川や庄川では河口付近は平野になります。扇状地が終わって、まっ平らな所を通ってから海に出るというわけです。それではまずはこの写真から見て行きましょう。糸魚川―静岡構造線が分かります。ナウマンが見たのと逆ですね。こっちの西南日本側からフォッサマグナを眺めていて、これを見たら、確かにここに境界あるなって感じます。

糸魚川―静岡構造線_撮影:知花武佳 


皆川典久 東京スリバチ学会
これは、どのあたりなんですか? 

知花武佳 河川研究者
入笠(にゅうがさ)山っていう山の山頂ですね。僕は登山家じゃなくて、どちらかというと車派なんですけれども、これ山頂のすぐ手前まで車で行けて、10分くらい歩けばここ行けます。 

磯部祥行 編集者
中央線富士見駅や、中央道の諏訪南インターの西のあたりですね。

大村拓也 土木な写真家
じゃあ奥の雲がかかっている山が八ヶ岳?

知花武佳 河川研究者
そうです

磯部祥行 編集者
見えている谷が国道20号とか、中央自動車道ですね。

知花武佳 河川研究者
はいそうです。やっぱりいろいろ違うんですよね、ここからは。ここを西南日本と東北日本の境界というのは、確かにその通りで、山の形が違います。姫川も河口は礫と言いましたけど、実は水源地帯に関してはやっぱり姫川というだけあって穏やかですね。

姫川上流(長野県)_撮影:知花武佳

長野にありがちな里山の川からスタートして、中流の糸魚川―静岡構造線沿いになると、こんな感じになります。山がとても険しいです。

姫川中流_撮影:知花武佳

海に出るところでも、礫浜ですよね。

姫川河口_撮影:知花武佳 


安藤達也 ドボ博事務局/建設コンサルタント
普通の川では下流に行くと流れが緩やかになって川の途中で大きな石は堆積し、河口には砂など小さい粒子しか流れつかないので、河口は砂浜になりますが、海まで急な河川では、石の浜(礫浜)になっているんですね。

北河大次郎 ドボ博館長
常願寺川は、暗闇では河口付近で流れてきた石が火花を散らすことがある、と地元の人から聞いたことがあります。

知花武佳 河川研究者
ちなみに姫川沿いは大糸線が走っています。

小野田滋 元国鉄職員の人@豊川
大糸線は姫川を何回も渡って行ったり来たりしていて、北小谷駅を境として上流側に第1姫川橋梁~第5姫川橋梁が、下流側に第1下姫川橋梁~第8下姫川橋梁があります。

大村拓也 土木な写真家
発電所も姫川第七発電所まであります。一部欠番の発電所もありますが…。

JR大糸線第3下姫川橋梁と黒部川電力姫川第六発電所 撮影:大村拓也


知花武佳 河川研究者
発電所は引き続き多いですね。敦賀湾と伊勢湾を結ぶ敦賀湾―伊勢湾構造線より西へ行くと、また急に減りますが、そこまでは木曽川など、発電所は多いですね。

(2)これが大きな石?

知花武佳 河川研究者
石でいうと、最近のお気に入りがこれです。常願寺川にあるんですけれども、西大森の大石っていう安政5年に大地震と土石流で巨礫が流れて来たという碑なんですよ。

常願寺川(富山県)_撮影:知花武佳

この写真を見ると大したことないじゃないですか。もっと大きいのが、例えば手取川の百万貫岩とかありますね。と、若干がっかりしていたら、実はこれ、この岩じゃないんですよ。この看板に書いてあったんですけれど…。

看板「大石の状況」_撮影:知花武佳

大石の本体はこれなんですって。今は堤防を作ったので埋まっていて、正体は見えない。大部分が埋没しちゃって。黒部川は大半が花崗岩で、ここ常願寺川は花崗岩と火山岩が半々くらいの川ですけれど、この大石は花崗岩ですね。


北河大次郎 ドボ博館長
その強力な流れから市街地を守るための砂防施設も、また迫力があります。富山県では、それらを防災遺産と位置付けて、今世界遺産を目指しているところです。

常願寺川泥谷堰堤_撮影:大村拓也

(3)湧水の多い扇状地河川

知花武佳 河川研究者
黒部川は、ものすごくはっきりした扇状地がある川です。扇状地のてっぺんを扇頂といいますけど、愛本という所はいかにも扇頂ですね。 黒部川(富山県)愛本堰堤から上流_撮影:大村拓也

上流側を見ると上の写真のように山の中を流れていて、下流側を見るとわーっと扇状地が広がっいて富山の海岸線が見えています。

黒部川(富山県)愛本堰堤から下流_撮影:大村拓也


安藤達也 ドボ博事務局/建設コンサルタント
黒部川扇状地では霞堤と呼ばれる堤防が多いことでも有名ですね。堤防のある区間に開口部を設け、上流側の堤防と下流側の堤防が、二重になるようにした不連続な堤防のことです。

黒部川霞堤_撮影:大村拓也

黒部川霞堤_撮影:大村拓也

洪水時には開口部から水が逆流して堤内地に湛水し、下流に流れる洪水の流量を減少させます。また、洪水に上流からあふれた氾濫流を河道に戻す役割もあります。現在も左右岸に7か所ずつ、14か所残っています。


知花武佳 河川研究者
扇状地を海沿いまで行くと生地(いくじ)の町があります。この町は好きですね。扇状地の先端部にあたり、湧水の洗い場があったり、あちこちに湧き水があったり面白いところです。

富山県黒部市生地_撮影:知花武佳

富山県黒部市生地_撮影:知花武佳

富山県黒部市生地_撮影:知花武佳

そして、ローソンの駐車場の湧き水。ここは、ミネラルウォーターがあまり売れないかもしれませんね。

黒部川扇状地扇端部_撮影:知花武佳

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