多摩川では、青梅を基点に扇状地が広がる。奥多摩橋は、その扇頂よりやや上流に架かる。多摩川を<背骨>とするならば、<骨盤>あたりに架かる橋といえよう。
そこには深い渓谷が広がり、トラスとアーチを組み合わせたブレースドリブ・アーチが、108mを一気に跨いでいる。アーチを下から見上げれば、力を踏ん張るように少し広げた両脚から、アーチの幅が徐々に狭まっている。これでもし、横から見た姿も、脚元から頂部に向かってアーチ厚が徐々に厚くなれば、フランス人技術者エッフェルがギャラビ橋で実現した、形が3次元的に変化するよりダイナミックなアーチ形状になっていたはずだが、ここでは落ち着いた形にまとめられている。
また、今は草木に覆い隠され確認しづらいが、大アーチの両側には、アーチ形(曲弦)トラスを下に垂らした特徴的な桁を連続している。
奥多摩橋は、第二次世界大戦以前に作られた道路アーチ橋として、最大の規模を誇った。しかし、この戦前の到達点は、戦後すぐに約3倍の規模でつくられた西海橋(長崎県)によって、簡単に乗り越えられてしまう。今からみれば、到達点というよりも、20世紀中期から末期にかけて、全国で熱く繰り広げられた橋梁長大化レースの序盤戦の名品といえよう。(北河)
種別 | 道路橋 |
所在地 | 東京都青梅市 |
構造形式 | 鋼製 アーチ橋 |
規模 | 橋長177m |
竣工年 | 1939年 |
管理者 | 東京都 |
設計者 | 東京府 |
備考 | 土木学会選奨土木遺産 |