TOKYO INFRASTRUCTURE 079 Port of Tokyo

サイボーグ化した東京の<口>


古来、港は都市の玄関口であった。人体でいえば、モノが入る<口>のようなものである(もちろん港から出ていくものもあるが)。つまり、都市における重要度は高い。

東京も、都市近代化を進める上で、港の位置づけが大きな論点となった。渋沢栄一ら経済界の面々は、横浜に負けない近代港湾を東京につくり、それを核に東京を商都として発展させようと考えた。しかし、横浜の反対などもあってそれが実現しないまま、近代東京はかたちづくられた。一方、壮大な都市構想と独立したかたちで、国際港としての東京港は1941年にようやく開港した。

「コンクリートのベルト状の道路を走りまわっているうちに突然、三本マストの大きな船が、砂埃の立っている陸地の間を擦り抜けるようにして視界に入ってきた。つづいて、青、赤、黄など、色とりどりのコンテナーを四角く何段にも積み上げた貨物船も、わずかな水面を縫って滑るようにやってきた。これが海か!」(安岡章太郎)

まちづくりとうまく連動しなかったためか、港を中心に発展した横浜と比べると、東京港はどこか都市と切り離された感がある。そして、巨大な工場を思わせる非日常的な風景が、都市の裏側に潜んでいるかのような、隠された魅力を秘めているように思う。

近代港湾として開港後、東京港はめざましい勢いで拡大していった。もともと海と陸をへだてるあいまいな領域であった海際を、次々と幾何学的で明瞭な輪郭に改造し、様々なマシンを備え付ける。空から見ると、東京港はまるで<肉体改造>したサイボーグのようだ。(北河)

Map
引用
安岡章太郎:僕の東京地図、世界文化社、2006.

種別 国際貿易港
所在地 東京都千代田区・中央区・港区・江東区・品川区・大田区
規模 陸地面積1033ha
竣工年 1941年開港
管理者 東京都
写真帖竣工特集
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