銀座・築地エリアを月島・晴海と結ぶ。都心・東京港を行き交う人やモノ、陸運・水運双方の流れが交錯する<循環器系>の要。かつては、橋の中央の桁が開閉することで、橋に遮られることなく船舶が隅田川を往来していた。川面から迫り上がる2本の桁が、「ハ」の字を描くダイナミックな風景は、人々を魅了した。
「日本には珍しい開閉橋で、一日に何回か一定の時刻になると、橋の真ン中が割れて左右にひらき、その間を帆柱を立てた船が通過するという仕掛けだ。僕はそれが面白くて、よく銀座あたりからわざわざ見物に出掛けたものだ。」(安岡章太郎)
国内最長を誇る26mの跳開部が、寸分の狂いもなく駆動する。その精巧なメカニズムは、一つの美の世界をつくりだした。
「そのうちに鉄板の中央部がむくむくとうごき出した。その部分が徐々に頭をもたげ、割れ目をひらいた。鉄板はせり上って来、両側の鉄の欄干も、これにまたがつてゐた鉄のアーチも、鈍く灯つた電灯を柱につけたまま、大まかにせり上つた。夏雄はこの動きを美しいと思つた。」(三島由紀夫)
水運が衰退し、桁の開閉は半世紀近く封印されたままだが、日露戦争に由来する「勝ち鬨」の名と、皇紀2600年(1940)の幻の日本万博にまつわる歴史の幻影は、今なお見る者の想像力を刺激する。(北河)
決定版三島由紀夫全集第7集、新潮社、2001.
安岡章太郎:僕の東京地図、世界文化社、2006.
種別 | 道路橋 |
所在地 | 東京都中央区 |
構造形式 | 鋼製 跳開橋・アーチ橋 |
規模 | 橋長246m |
竣工年 | 1940年 |
管理者 | 東京都 |
設計者 | 東京市 |
備考 | 重要文化財 |