建物の外壁や柱などを対象に、街を平面的に切り取る写真家、杉浦貴美子が見たドボクの姿。巨大な土木構造物をヒューマンスケールで切り取ってみたら、規則性を持ったパターンや、経年変化による痕跡が浮き上がってきました。
「つなぎ目」
土木構造物のつなぎ目に現れた、反復するパターン。左は、JR浅草橋駅東口高架下にある鋼板柱の一部で、丸い突起物は接合部に用いられるリベット。「A」は浅草橋の頭文字かと思ったが、その後どの駅の高架下にも類似する記号は見当たらないため、落書きなのかもしれない。右は、目黒川に架かる太鼓橋の歩道と道路をつなぐ鉄鋼板のジョイント部分。溝に土や水が溜まり雑草も生え、地面と同化していた。
「巨大な平面」
かつて荒川と隅田川を仕切っていた旧岩淵水門。東隣にある現役の岩淵水門が青いことから、対照的に“赤水門”と呼ばれている。水門の脇が歩道となっており対岸の緑地まで行くことができ、絶好の水門ビューが臨める。左は、水門に付属する機械倉庫を支える壁。コンクリート壁に水門と同色に塗られた鉄板が貼られているが、時とともに徐々に剥がれ始めていた。右は、西側から見た門扉。そのあまりにも巨大な平面っぷりに、スケール感を失ってしまう。
「補修の痕跡」
東急田園都市線池尻大橋駅ホーム内、複線のレール間にあるコンクリート壁に残る補修の跡。左の壁は、約10cmピッチで穴が開けられ、ピンク色のチョークでメモが残されていた。数字が何を示しているのか、この先どんな補修が行われるのか、私には見当もつかない。右も同じコンクリート壁。設置された金具に沿って亀裂が入っているのか。それとも亀裂を広げないための金具なのか。金具に積もる埃から時間の経過を感じる。
写真 ©杉浦貴美子