パート22 “近代水道の隠れた見どころ”
水道の話もまだでしたね。
こんな絵ハガキもっているんだけど。戦前の東京市水道局がつくったもの。
4枚つづりで、一つの絵にしてるなんてシブイですね。
山口貯水池が完成して、青梅電気鉄道が御嶽駅までしかきてないから、昭和4年から19年までの絵かと思うけど。
「国旗と水道は家ごとに」っていう言葉も、時代を感じさせるね。
まだ小河内でダムつくってる気配ないから、着工前の昭和10年代前半かもしれませんね。
多摩川の水源林も描かれてますね。当時から東京水道を代表する施設だったんですね。
本多静六ですね。ドイツで学んだ。日比谷公園の設計にも関わってる。
多摩川に帆かけ舟が通ってたんですね。所沢には飛行機も描かれてるし。
帆かけ舟の近くには「玉川鮎漁」って書いてますよ。だいたい今の狛江から調布あたりかな。
戦前の東京市の水道ネットワークがわかって面白いですね。
昭和7年に「大東京」ができて、もともと東京市外だった渋谷町なんかが独自につくった水道が吸収されて、一つのネットワークになった頃ですね。
江戸川の取水は、「男はつらいよ」のオープニングで出てくるとんがり屋根の塔が有名だよね。
柴又帝釈天のすぐそばですからね(笑)
水道橋といえば、市ヶ谷の水道橋もいいですよね。都心に近いところで、あういうのは珍しいですよね。
市ヶ谷の水道橋?
釣堀のところです。道路橋の脇に架かってる。
あれ、鉄道省が作ったんですよ。
あっ、そうだったんですか。
橋桁が、鉄道の標準桁みたいでしょ。鉄道で使う単線のプレートガーダを準用して設計してるんです。
そういわれると確かに。
ただ、鉄道より荷重が軽いんで、その分、スパンをとばしてるんだけどね。
水道道路ってのも、結構ありますよね。
ありますよ。
まっすぐな。
環八を斜めに横切ってる。あれは、荒玉ですか?
荒玉水道道路。小野田さんの絵ハガキでも、まっすぐ描かれてますもんね。
「砧上浄水場」から北東に延びてる線ですね。
大型車が入ってこないように、途中で入口を狭くしてますよね。
桜上水の方のね。ただ桜上水の「上水」は、玉川上水のことだけど。
とにかく直線が長い。10kmくらいあるんじゃないですか。
さっきの絵ハガキ見ると、荒玉水道道路に限らず、直線的なルートがたくさんありますね。玉川上水とは対照的。
地形を丁寧に読んで通す近世の水道と、技術力で2点を最短で結ぶ近代の水道。
鉄道の標準桁の話といい、東京の近代水道にも、マニアックな見どころがいろいろあるんですね。
【次回へつづく】
座談会アフタートーク
■小野田滋氏による「市ヶ谷見附跨線水道橋」についての解説(学芸員の部屋)
今回の座談会で話題になった、市ヶ谷駅の水道橋。中央線からも見ることができますが「あの橋はなんのための橋なのだろう?」と実は水道のための橋であることを知らない人も多いのではないでしょうか。
中央線と外濠を跨ぐ特徴的な橋の詳細について、ドボ博・鉄道担当理事の小野田滋氏による解説を寄稿していただきました。その解説を貴重な図版とともに「学芸員の部屋014 市ヶ谷見附跨線水道橋(市ヶ谷水管橋)について」と題してまとめてありますので、ぜひご覧ください