ドボ博 座談会 パート23

用水を見れば地形がわかる

zadankai
「東京インフラ解剖」といきなり言われても、何の事だかよくわからない。そんな方にも、東京インフラを見る「とっかかり」を作ってもらうため、独自のこだわりをもつ専門家による、マニアックな座談会を行いました。壁マニア、地形マニア、橋マニア、鉄道マニア・・・。これを読めば、きっとあなたなりの東京インフラの見方が見つかるはずです。


パート23 “用水を見れば地形がわかる”

(鉄道に詳しい)小野田さん

水道といえば、用水路を調べている人がいますよね。三田用水だとか、品川用水。

(カメラマンの)大村さん

あれは農業用水じゃないんですか??

(スリバチ学会の)皆川さん

元々は飲料用水。江戸時代に作られたんだけどね。

(鉄道以外もいろいろ詳しい)小野田さん

玉川上水から分かれてますね。

東京インフラ049 玉川上水

江戸上水図(提供:土木学会附属土木図書館)

 

(スリバチ学会の)皆川さん

玉川上水と、北沢で分かれて、品川へ通した、とかね。三田用水の場合は。だいたい地形的には尾根筋を辿ってますよね。一番高いところを。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

三田用水が、目黒の駅のどの辺で山手線を横断していた、とかいう話もありますよね。

(スリバチ学会の)皆川さん

マニアックな人が調べていますね。

(橋に詳しい)紅林さん

アメリカ橋(恵比寿南橋の通称)あたりですよね。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

アメリカ橋?恵比寿の?

(スリバチ学会の)皆川さん

本線はもうちょっと南、目黒駅の近くで、山手線を渡ってたみたいです。そこから先も辿れるんです。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

どこかで読んだことあるなぁ…

(スリバチ学会の)皆川さん

スリバチ本に書いてあります。

東京「スリバチ」地形散歩(クリックすると出版社の紹介ページへ移動します)

(マニア目線の)八馬さん

さりげな(笑)

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

ということは、用水もスリバチがわかるとみえてくるってことですね。

(スリバチ学会の)皆川さん

結局、地形の高低差ですからね。

(実は絵葉書コレクターでもある)小野田さん

絵葉書もありますよ。山手線の上に、鉄筋コンクリートの懸樋が架かってる。

提供:小野田滋

 

ドボ博 学芸員の部屋 013

ドボク素人な大山さん

へぇ、すごい。電車が通る上を水が流れてたんだ。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

小野田さん、次から次へとすごいもの出てきますね(笑)

(実は絵葉書コレクターでもある)小野田さん

懸樋の奥には、昔の目黒通りの跨線橋もうつってます。鉄道橋を転用したものだけど。

ドボク素人な大山さん

今の目黒駅からは想像できない...

(橋に詳しい)紅林さん

旧山手通りの西郷橋も、三田用水を抱えてるんです。いまだに中に水路が入ってる。

(スリバチ学会の)皆川さん

中を流れてたんですよね。

西郷橋(撮影:大村拓也)

 

(橋に詳しい)紅林さん

中に水路を入れないといけないから、アーチを扁平にして、上のコンクリート壁の部分を厚くしてるんです。

(マニア目線の)八馬さん

なるほど。確かに少し不自然なかたちしてますよね。

(スリバチ学会の)皆川さん

架かってました。駒沢通りの上に。

内田さん

昭和の懐かしい風景です。

北河さん

三田用水って、恵比寿ビールをつくるのにも使ってたんですよね。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

三田用水で、ですか。そうなんだ!

(橋に詳しい)紅林さん

むしろ三田用水があったから、あそこにビール工場が立地したはずですよ。

(ビールも好きな)八馬さん

水が良くなければね。ビールもおいしくないですもんね(笑)

(スリバチ学会の)皆川さん

ほかにも三田用水のまわりの邸宅が、自分の家の庭に水ひきこんで、滝つくったりしてましたね。

北河さん

琵琶湖疏水と京都東山の邸宅の関係みたいですね。

(カメラマンの)大村さん

用水も結構多目的だったんだ。

(公園・緑地に詳しい)土井さん

用水だと、ネットにはこんなサイトもあり、詳しい地図がでています。

本田創氏ブログより引用(出典:https://tokyoriver.exblog.jp/24989809/)

(なにかに気づいたスリバチ学会の)皆川さん

あれ、これ?!暗渠マニアの本田さんが作ったのじゃない?これだけ詳しいのは。

(駅と地形の関係に関心がある)田村さん

三田用水が、目黒川の左岸側に通ってますね。

(スリバチ学会の)皆川さん

尾根筋を選びながら。

(橋に詳しい)紅林さん

尾根筋を通さないと、水は遠くまでいかないですよね。

(スリバチ学会の)皆川さん

自然流下ですから。基本はね。ポンプが無かった時代だから。

(橋に詳しい)紅林さん

小平とか、玉川上水が通っているあたりは、測量しなくてもわかるんです、高低差が。一番高いのは玉川上水で。そこから分かれて、小平用水とか、小川用水とか。

(マニア目線の)八馬さん

枝分かれする用水が、東京の高低差を視覚化してるってわけですね。

 

【次回へつづく】

 

 


座談会アフタートーク

■暗渠学(ANKYOLOGY)をはじめてみませんか?

今回話題になった、暗渠についてですが、座談会でも登場した本田創氏による『東京暗渠学』という本が昨年出版され、ちょっとしたブームとなっています。東京の用水や小河川を暗渠の観点から様々な地図・図版とともに紹介されており、以前出版されていた『東京「暗渠」散歩』と合わせて東京の暗渠を学ぶ「ANKYOLOGY」を楽しむ上では欠かせない本となっています。

本屋さんでも旅やまちあるきコーナー、地図コーナーの近くで置かれていますのでぜひ一度手にとって見るのはいかがでしょうか?

東京暗渠学・出版社(洋泉社)紹介ページ
http://www.yosensha.co.jp/book/b308372.html

 

 

■意外と詳しい、自治体の歴史ページから用水の歴史を辿る

用水や暗渠については、ドボ博東京インフラ解剖では「049 玉川上水」や「051 羽村取水堰」などを取り上げていますが、ドボ博での情報からさらに詳細な歴史について知りたい方には自治体のHPに掲載されている歴史ページにも貴重な資料が掲載されている場合があります。その一部についてご紹介します。

□玉川上水について

「玉川上水の歴史」(東京都水道局HP)
http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/kouhou/pr/tamagawa/rekishi.html

「玉川上水の歴史」(東京都小平市HP)
http://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/009/009353.html

□三田用水について

「歴史を訪ねて 三田用水」(東京都目黒区HP)
http://www.city.meguro.tokyo.jp/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/michi/rekishi/tobu/mita1.html

http://www.city.meguro.tokyo.jp/gyosei/shokai_rekishi/konnamachi/michi/rekishi/tobu/mita2.html

 


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