毛織物の
ものがたり

毛織物の生産には、毛紡績、撚糸、糸染、染色整理、織物修整等、多くの工程と関連業務を必要とするが、愛知県北西部の木曽川沿岸を中心に、尾西・尾北・名古屋には、これらの業種が高度に集積して立地し、有機的に結合して総合テキスタイル産地を形成している。

この地域の繊維業が発展した一因として、尾西鉄道の建設が挙げられる。尾西鉄道は、津島周辺の地域に鉄道が敷設されていないことを危惧し、織物関係の原料・製品輸送(に津島神社の参拝客誘致を絡めて)を目的に、関西鉄道の弥富駅と東海道本線の尾張一宮駅を結ぶ鉄道として計画された。当時、東海道本線は東京・京阪神まで接続した官設鉄道であり、関西鉄道は四日市港を経由して世界へ連絡できる路線である。つまり津島と全国の主要都市、及び四日市港との連絡を可能にするものであり、中部の繊維業の発展に大きく寄与した。

この地域で毛織物が発展したのは、木曽川の水源に恵まれたこと、そしてウールに非常に適した約60%の湿度を年中保つことができる蒸し暑さによるところが大きい。このような地理的、気候的条件に恵まれた尾州は、国内の毛織物生産量の約8割を占め、尾州ウールは高いクオリティを誇っている。

毛織物に関わるインフラ