川展 日本河川風景二十区分 ―国分かれて山河似る―

ドボ博 川展

日本河川風景二十区分 ―国分かれて山河似る―

はじめに

日本は山がちで細長い国土ゆえ、全国津々浦々、大小様々な川が流れています。国や、都道府県、市町村が管理する河川を合わせるとおよそ35000*1を超す河川があり、それぞれの地域を流れる川は地形や地質などによって雰囲気が異なってきます。日本各地の河川を実地踏査されてきた東京大学河川研究室の知花武佳さんは、日本の全国の一級河川109水系の河相と流域景観を写真に記録して把握し、日本の川の個性を整理して、その現状に基づいて類型(類似の特徴を有している地域区分)化を試みています。その区分を手掛かりとして、川から見た日本の国土の姿を見ていきましょう。

<用語解説>
一級水系・一級河川
一級水系とは、河川法に定められた日本の水系の区分により、国土交通大臣が国土保全上または国民経
済上特に重要として指定した水系を指します。一級河川とは、一級水系に含まれる河川で、日本全国に北
は北海道から南は鹿児島県まで 109 水系あります。

http://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen_db/pdf/2019/ref4.pdf
国土交通省河川データブック 2019

*1|平成30年度時点で、一級河川109水系14046河川、二級河川2711水系7081河川、準用河川14327河川、合計35454河川

既往の日本の河川についての類型化の試み

普段「川」というと、流域単位で認識されることが多いと思います。国が管理している一級河川も水系という流域単位で管理され、河川の特徴も流域ごとに議論されてきました。その他の中小河川も流域単位で管理されています。
日本の河川について類型化を試みた研究としては、小出博の研究があります。1970年に発表された『日本の河川』では、大規模な地質体である地帯構造の境界線である構造線を考慮して、糸魚川―静岡構造線により東北日本、西南日本を分け、西南日本はさらに中央構造線により外帯、内帯に分け、それら3つの領域における河川の特徴を分析しています。それぞれの特徴は簡単にまとめると以下のようになります。

東北日本

  • 流域面積が大きい河川が多い(流域面積上位10河川のうち9河川が東北日本にある。
  • 上流に大きな盆地があることが多い。また、盆地下流の峡谷の勾配が急で、しばしばはげしい蛇行を行うため、盆地に広大な淡水地帯が現われる。

西南日本内帯

  • 地質構造が比較的細かく分かれており、各地質構造区の中では多くの独立した中小河川に分かれて流れている。
  • 規模の大きい盆地は少なく、小盆地群と狭長な谷平野が多い。

西南日本外帯

  • 破砕体地すべり地帯であり、古い山村が発達してきた。流域には棚田や段々畑がみられる。
  • 流域面積が小さい河川が多く、山地における河川の蛇行が多くみられる。
  • 平野が少なく小規模であり、水田地帯が少なく、急傾斜地の利用が最も広く行われてきた。

日本河川風景二十区分

今回、ドボ博「川展」では知花さんの分類に基づいた日本河川風景二十区分を紹介します。主に、堤防
の上に立って川を眺めた時の「リーチスケール」に立脚しつつ、上位・下位の空間スケールも踏まえて、
同じような河川の個性が見られる区分の分類を試みています。
まず日本列島を主要な構造線で 5つ(北海道・東北地方、関東・甲信越地方、中部地方内帯、西南地方
内帯、中部・西南地方外帯)に区分し、その中をさらに細分化し 20 区分としています。前述の小出博の
分類の区分をさらに細分化した形になります。

河川風景二十区分は、特に「リーチスケール」、人が川べりから見た時の風景によって川の個性を整理している点が特徴です。現地で撮影した豊富な写真や映像も強みです。
古来人は川の恵みを利用し、時に荒ぶる川を恐れながら、川と寄り添って暮らしてきました。川は人の暮らし方を規定する大きな自然要素で、川の個性が違うことによって、その地域の社会や文化など様々なことに潜在的に影響を与えていると考えられます。川の風景に着目して、川の個性を紐解くことで、その地域ごとの地理的、地質的特徴のみならず、多面的な地域社会の姿が見えてくるのでは、と期待しています。河川風景区分は地域の個性をよりよく理解する、一つの足掛かりとなればと考えています。

領域区分の考え方

地域区分の境界は、主に以下の 2 つの観点から境界線を引いていています。
・日本列島の地帯構造
・地形(変動地形のタイプ、山の形、分水嶺 など)

地質の基盤構造について、日本列島の地質構造は極めて複雑であり、古くより様々な地質区分図が提唱されてきましたが、河川風景の類型化と最もよく対応すると考えられるのが「日本におけるプレート造山論の歴史と日本列島の新しい地帯構造区分」磯崎行雄・丸山茂徳の図であり、この地質境界を主に風景区分の境界として採用しています。また、地形については貝塚爽平が 1986 年に提唱した変動地形のタイプや、火山の影響なども参考として境界を引いています。一部の境界線は分水嶺を採用しています。なお、領域の境界線については、地質境界などは明確に分かっていない場合もあり、便宜的に線を引いていますが、必ずしもこの線を境に明確に風景が変わるというものではありません。

<用語解説>
日本列島の地帯構造区分
地帯構造区分とは表層地殻を構成する地体構造単元の境界の日本列島の場合、地表を覆う若い火山岩類や虫食い状に貫入した弧花崗岩類を除くと、基盤岩類は列島にそって帯状配列する複数の地体構造単元に区分されることが明治以来の詳しい地質調査で明らかにされています。

日本列島の地体構造図(磯崎・丸山(1991)を改変した平田(2010)の図を引用)

<用語解説>
変動地形のタイプ
日本の山地、山脈がどのように隆起してきたかに注目し、典型的な 6 つの地殻変動のタイプ( a)曲隆山地・曲降盆地、b)褶曲・断層による山脈と盆地、c)逆断層地塊、d)横ずれ断層地塊、e)正断層地塊、f)プレートの沈み込みに伴う巨大逆断層)に分類しています。

貝塚爽平、鎮西清高編(1986):日本の自然 2 日本の山、岩波書店

各区分の紹介ページについて

日本河川風景二十区分の各区分に関するページでは、河川をはじめ各分野の専門家をお招きして、河川風景区分について座談会形式で紹介していきます。

※第1弾(2019年8月8日)の公開では20区分のうち、区分1~区分3までになります。その後の区分については順次公開していきます。

座談会の参加者は以下の通りです。

知花武佳 河川研究者 @武庫川
磯部祥行 編集者 @信濃川(最下流)
小野田滋 元国鉄職員の人 @豊川
三橋さゆり 河川管理者@利根川
皆川典久 東京スリバチ学会 @広瀬川
北河大次郎 ドボ博館長 @常願寺川
安藤達也 ドボ博事務局/建設コンサルタント @隅田川

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