1957(昭和32)年11月15日、名古屋市営地下鉄東山線の名古屋~栄町(のち「栄」と改称)間の2.4kmが開業し、名古屋市はわが国で3番目の地下鉄の走る都市となった。
すでに1936(昭和11)年頃から具体化していた名古屋市の地下鉄計画は、戦争で一時中断したものの、終戦直後の1947(昭和22)年に早くも6路線、延長55kmの路線計画が立案された。この計画は、国鉄名古屋駅の高架線のプラットホームを借用することが考慮されたほか、名古屋鉄道と名古屋、大曽根、水分橋、新川で、近畿日本鉄道と八田で相互直通運転を行うという、当時としては画期的な内容を含むものであった。
しかし、その後の計画の縮小により、国鉄名古屋駅乗り入れと名鉄、近鉄との相互直通運転は実現せず、小断面の第三軌条方式による地下鉄として、1954(昭和29)年に着工した。開業時の絵葉書には、栄町駅に停車するカナリヤ色の電車が写っているが、まだ路線長も短かったため、2両という短編成であった。東山線は、1960(昭和35)年、第3期工事の堀割町工区(池下~覚王山)で、わが国の地下鉄工事としては最初の円形断面のシールド掘削機を用い、その後のシールド工法の発展に大きな影響を与えた。また、地下駅に併設された地下街は当時としては珍しく、名古屋の新名所として知られた。
2007(平成19)年に50周年を迎えた名古屋市の地下鉄は、6路線、総延長89.1kmに成長し、市民の足として人々に親しまれている(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2007年12月号掲載)
Q&A
円形断面シールドについて、もう少し詳しく教えて下さい。
世界最初のシールドトンネルは、フランス人でイギリスへ亡命したマーク・イザムバード・ブルネルという技師が発明してロンドンのテムズ川の河底トンネルで用いられ、その息子のイザムバード・ブルネルによって1843年に完成しました。この時に用いられたシールド掘削機は箱型の四角い断面でした。その後、ジェームズ・ヘンリー・グレートヘッドという技師が円形断面のシールド掘削機を設計して、1870年にテムズ川をくぐったタワー地下鉄で用いました。これが現在につながる、円形断面シールド掘削機の原型になります。ロンドンのチューブと呼ばれる地下鉄は、この円形断面のシールドを使いました。
日本の地下鉄で最初のシールドトンネルとなったのは、1958(昭和33)年に完成した営団地下鉄丸ノ内線の総理官邸前のトンネルで、ルーフシールドと呼ばれるシールドを使いました。このシールドは半円型断面のシールドだったので、地下鉄用の円形断面のシールドは、名古屋市の東山線が最初になります。ちなみに、日本最初の円形シールドは、1921(大正10)年に羽越本線の折渡(おりわたり)トンネル(秋田県)で使いました。このトンネルは、日本最初のシールドトンネルでもあります。(小野田滋)
”名古屋市営地下鉄”番外編
師匠。またもや大発見です!
何だい。
この電車、電車なのにパンタグラフがありません。バッテリー電車の元祖ですか?
お前さんの大発見も、そんなことを知らないようじゃ、鉄分が足りとらんな。
えっ、じゃあこれはディーゼルカーってやつですか?
何言ってるんだ。これは第三軌条式と言って、線路の脇に電流を通したレール(軌条)がもう1本あるんだ。
あっ、この絵葉書でも、左下に写っていますね。
電車の台車の横にはコレクターシューという集電装置が取り付けてあって、それで第三軌条をこすりながら電気を集めていた。
なるほど。それでパンタグラフが無いんですね。
東京の銀座線や丸ノ内線、大阪の御堂筋線などでも使われている。
そう言えば、銀座線の電車もパンタグラフがありませんね。
第三軌条は、別名“サードレール”とも言う。
“サード”と言えば長島ですね。
お前さんも、ずいぶん古い選手を知ってるな。さては昭和の生まれだな。