1本の案内軌条のみを用いる交通機関であるモノレールは、懸垂式鉄道と跨座式鉄道の2方式に大別される。このうち、懸垂式は、軌道の下に車両がぶら下がる方式のモノレールで、地方鉄道法に基づいて実用化されたのは1957(昭和32)年に開業した東京都交通局上野懸垂線が最初であった。上野懸垂線は、上野動物園の入場者のみを対象としていたため、遊戯施設的な交通機関にとどまったが、1970(昭和45)年に開業した湘南モノレールは、懸垂式として初めて本格的な旅客営業路線となった。
湘南モノレールは、1961(昭和36)年に設立された日本エアウェイ開発によって計画が進められ、フランスのサフェージュ社の特許に基づく懸垂式モノレールの実現にあたった。1966(昭和41)年に湘南モノレールが設立され、大船を起点として江の島を結ぶ路線として建設が進められた。路線は1970(昭和45)年に大船~西鎌倉間が開業し、翌年にはさらに湘南江の島までが開業して、延長7.2kmが全通した。
「湘南モノレール/横須賀線横断」と題した絵葉書には、横須賀線を跨いでその上空を横断する湘南モノレールの姿がおさめられた。背後には、大船と江の島を結んでいた京浜急行江ノ島専用自動車道の高架橋も併走するが、湘南モノレールは、ほとんどの区間でこの専用道路の上空を利用して建設された。
懸垂式のモノレールは、その後も1988(昭和63)年に開業した千葉都市モノレールでも導入され、現在も都市交通機関の一翼を担っている。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2015年2月号掲載)
Q&A
モノレールは鉄道ですか?
鉄道の種類は、現行の「鉄道事業法施行規則」という省令の中で定められていて、普通鉄道、懸垂式鉄道、跨座式鉄道、案内軌条式鉄道、無軌条電車、鋼索鉄道、浮上式鉄道、前各号に掲げる鉄道以外の鉄道の8種類に区分しています。このうち、懸垂式が懸垂式モノレール、跨座式が跨座式モノレールにあたります。したがって鉄道の一種です。ただし、遊園地内の遊具として使われるモノレールや、ミカン畑などで使われている運搬用の簡易なモノレールは公共交通機関ではないので、法令上は鉄道として扱われません。(小野田滋)
”湘南モノレール(神奈川県鎌倉市/藤沢市)”番外編
「モノレール」って、どんな意味ですか?
英語で書くと「monorail」となるが、「momo」は「ひとつの」「単一の」という意味があるから、直訳すると「1本のレール」という意味になるな。
たしかに、走るところは1本だけですね。
「mono」はモノクロ、モノトーン、モノラルなど、単一の色とか音を表す言葉としても使われる。
日本語は無いんですか?
日本語では「たんき鉄道」と訳している。
短気鉄道⁉
その「たんき」ではない。「単軌」と書く。
そのまんまですね。
モノレールが日本で最初に走った場所を知っているか?
本文には、上野懸垂線のモノレールが最初ってありますけど。
正式に認可を受けて交通機関として開業したのは、1957(昭和32)年の上野動物園のモノレールが最初だが、それよりも古いモノレールがあった。
あっ!遊園地でよく見かけるから、遊園地が最初じゃないですか?
たしかに、東京の豊島園にあったモノレールは、1951(昭和26)年に完成したから、上野動物園より古いが、もっと昔にもあった。
もったいぶらずに、早く教えてくださいよ。
お前さんも短気だな。1928(昭和3)年に大阪の天王寺公園で大阪交通電気博覧会が開催されて、「懸垂飛行鉄道」「空中飛行電車」として公開されたのが最初だ。
空飛ぶ電車ってことですね。
実は、豊島園のモノレールや湘南モノレールの設計に関わった三木忠直という技術者は、もともと海軍で軍用機の設計をしていた人だ。
そう言われると、モノレールは翼の無い飛行機のように見えますね。
小田急の初代ロマンスカーの設計もこの人だ。
「ピポーの小田急」ですね。
お前さんもずいぶん古いCMを知ってるな。ザ・ピーナッツの歌だぞ。さては昭和の生まれだな。
小田急、小田急、ピポ、ピポ♪