大阪環状線は、城東線と呼ばれた東半分の区間を母体として、西成線や大阪臨港線といった既設の路線を結んで完成した。このうち、西九条から安治川を渡り、弁天町を経て大正付近へ至る区間は、新設線として建設され、PC(プレストレスト・コンクリート)桁と合成桁を多用した高架橋を用いた。工事は、日本国有鉄道大阪工事局が担当し、西成線の高架化工事を含めて1956(昭和31)年3月に着手して、1961(昭和36)年4月25日に西九条~天王寺間が開業して大阪環状線が完成したが、西成線区間はまだ高架化工事中だったため、環状運転が開始されるのは1964(昭和39)年3月22日からであった。開業を記念して日本国有鉄道関西支社が発行した「大阪環状線開通記念絵はがき」からは、ドボ鉄第45回で「安治川橋梁」を紹介したが、今回紹介するのは弁天町駅付近の高架橋である。
敷設されたばかりの大阪環状線の線路の後方には、弁天町駅で大阪環状線の上をほぼ直交して跨ぐ大阪市交通局(現在の大阪メトロ)中央線(大阪市高速電気軌道4号線)の高架橋が写っている。中央線は、大阪の東西を結ぶ路線として計画され、工事は、路線の西端に位置する大阪港~弁天町から開始され、大阪環状線開業直後の1961(昭和36)年12月11日に開業した。工事は、さらに東をめざして進められ、弁天町~本町間が開業するのは、1964(昭和39)年10月31日のことであった。写真は右側が大阪港方面、左側が本町方面となり、ほぼ中央には境となる弁天町停留場が見える。現在では周囲にビルが林立するが、開業当時は人家すら無く、高架下を利用して交通科学館(交通科学博物館を経て京都鉄道博物館として移転)が開館するのは、翌年1月のことであった。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2013年1月号掲載)
Q&A
大阪環状線と山手線はどちらが長いのですか?
大阪環状線の周長は21.7kmですが、山手線の周長は34.5kmあるので、山手線が約1.5倍あります。山手線は日本鉄道品川線の開業から数えて40年目に環状運転を開始しましたが、大阪環状線は大阪鉄道天王寺~玉造間の開業から数えて71年目に環状運転を開始しました。(小野田滋)
”大阪環状線(大阪市港区)”番外編
大阪環状線って、最初から環状線じゃなかったんですね。
東京の山手線もそうだが、少しずつ線路を延ばしながら、最終的に環状線になった。
初めから環状線をめざしていたんですか?
どちらも最初からめざしていたわけではなく、結果的にそうなっただけだ。
ほかの都市にも環状線はあるんですか?
普通鉄道に限ると、名古屋市の地下鉄名城線が環状運転をしているぞ。
でも、大阪環状線は山手線と同じで、単純に内回り外回りだけかと思ってたら、奈良行とか関西空港行とかもあって、ややこしいですね。
たしかに、山手線に慣れていると、1周して必ず元の場所に戻ると思いがちだな。
山手線は居眠りしてもだいじょうぶだけど、大阪環状線はうっかりできないですね。
だが、慣れれば乗換えなしで行けるから便利だぞ。
2025年の関西万博めざして弁天町駅も改装工事をするみたいだから、今から楽しみですね。