ドボ鉄065海外への玄関口

絵はがき:旧横浜港駅プラットホーム(横浜市中区)


 海外への玄関口であった横浜港は、大桟橋だけでは不十分であったため、1899(明治32)年から新港埠頭の造成に着手し、税関の拡張工事を兼ねたこともあって、大蔵省臨時税関工事部(のち臨時建築部)が事業を行った。
新港埠頭には、1914(大正3)年に新港埠頭を横断する海陸連絡鉄道が完成し、海面埋立工事と港湾施設の整備も1917(大正6)年に完成して、1920(大正9)年には横浜港(よこはまみなと)駅が開業した。そして、東京駅と横浜港駅の間には、外国航路の入出港にあわせてボートトレインと呼ばれる連絡列車が運転された。
 「横濱臨港停車場」と題した絵葉書には、横浜港駅のプラットホームと8620形蒸気機関車が牽引するボートトレインの姿がおさめられた。写真のプラットホームは、震災復興によって1927(昭和2)年に完成したが、戦争の激化とともに1941(昭和16)年にボートトレインの運転を休止した。
 戦後は、氷川丸のシアトル航路運航に合わせて1957(昭和32)年にボートトレインが復活したが、すでに航空機による海外渡航の時代となっていたため、1960(昭和35)年には廃止されてしまった。駅自体は、その後も輸出入の貨物などを扱う駅として存続したが、1982(昭和57)年には信号場となり、貨物の廃止とともに1986(昭和61)年に信号場も廃止となった。
 横浜港駅の跡地には、廃止されたプラットホームの一部が保存され、元横浜税関の保税倉庫(横浜赤レンガ倉庫)とともに、横浜港の歴史を物語る遺産として余生を送っている。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2020年1月号掲載)

 

この物件へいく


Q&A

文中の専門用語などを解説します

Q

「ボートトレイン」って何ですか?

A

 船の発着に合わせて、港まで運転される列車のことです。日本ではしばしば「ポートトレイン(port train)」と呼ばれることもありますが、英語の辞書などでは「boat train」の見出し語しかないので、和製英語です。(小野田滋)


”旧横浜港駅プラットホーム(横浜市中区)”番外編

師匠とその弟子・小鉄が絵はがきをネタに繰り広げる珍問答

小鉄

師匠、この間、横浜の汽車道を歩いてきました。

師匠

アメリカ製のトラス橋は、ちゃんと見てきたか。

小鉄

もちろんですよ。港1号橋梁と、港2号橋梁ですね。

師匠

横浜港駅のプラットホームは見たのか。

小鉄

それが、港3号橋梁を見たあと、赤煉瓦倉庫の方向にまっすぐ行ったんで、見逃しちゃいました。

師匠

初めて行く場所は、そんなもんだ。全部見てきたつもりでも、必ずひとつふたつは見落としている。

小鉄

赤煉瓦倉庫が想像以上に立派な建物だったんで、そっちに目を奪われちゃって……。

師匠

まあ、次に行く時の楽しみにとっといたと思えば、落胆することもないぞ。

小鉄

まだ見所はいっぱいありますか?

師匠

横浜は、日本の近代化が始まった土地だから、近代化遺産の宝庫だ。

小鉄

そう言えば、鉄道も新橋~横浜が最初でしたね。

師匠

今の桜木町駅が、初代の横浜駅のあった場所だ。

小鉄

てっきり今の横浜駅かと思ってました。

師匠

ドボ鉄49回で紹介した博多駅もそうだが、駅は時々引っ越しするから注意が必要だ。

小鉄

桜木町駅には何か残ってますか?

師匠

双頭レールで造った記念碑が建っているぞ。

小鉄

この間行った時は桜木町駅を利用したんですが、気が付きませんでした。

師匠

新南口という少し離れた場所にある。それから、最近「旧横ギャラリー」という鉄道の歴史コーナーもオープンしたぞ。

小鉄

見所だらけで、お腹いっぱいです。

師匠

次に行く時の楽しみが増えすぎたかな。

論文
Back To Top