モノレールについては、ドボ鉄の第86回で懸垂式の湘南モノレールを紹介したが、今回紹介する奈良ドリームランド(奈良市)のモノレールは、1961(昭和36)年に跨座式を日本で最初に採用したモノレールとして登場した。
跨座式モノレールの軌道桁は、上面と左右を走行車輪(ゴムタイヤ)で挟むためにI形の断面が用いられ、プレストレストコンクリート構造によるI形桁はまさにその条件を満たしていた。奈良ドリームランドで用いられたPC桁は、オリエンタルコンクリート(現在のオリエンタル白石)が製作を行い、標準桁長15.0m×幅0.6m×高さ0.8mの直線桁、緩和線桁、曲線桁の合計59連を延長860mにわたって8の字に敷設した。
当時のモノレールの大半は外国の技術に依存していたが、奈良ドリームランドのモノレールは東芝が独自に技術開発を行なった(「東芝式モノレール」と称された)。しかし、鉄道ではなく遊戯施設であったため、日本で最初に公共交通機関として跨座式を採用したモノレールは、1962(昭和37)年、愛知県犬山市に開業した延長1.2kmの名古屋鉄道犬山ラインパークモノレール線となった(日立・アルウェーグ式)。
スマートで力強いプレストレストコンクリート桁の造形は、近未来の乗物として登場したモノレールにもふさわしく、その後も跨座式モノレールの軌道桁として一般的に用いられた。跨座式の先駆者であった奈良ドリームランドのモノレールは、2003(平成15)年には運転を休止し、2006(平成18)年には遊園地自体も閉園となって姿を消してしまったが、子供たちの夢の乗物だったモノレールは、都市交通機関として各地に普及し、現在に至っている。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2021年8月号掲載)
Q&A
東芝式モノレールはどのような特徴があったのですか?
本文にもありますが、当時のモノレールの大半は外国の技術に依存していて、日立・アルウェーグ式(西ドイツ→日立/跨座式:読売ランド、犬山ラインパーク、羽田モノレール)、日本ロッキード式(アメリカ・ロッキード社→川崎航空機工業・川崎車両・日本電気・西松建設など/跨座式:向ケ丘遊園・姫路市交通局)、日本エアウェイ・サフェージュ式(フランス・サフェージュトランスポール社→日本エアウェイ/懸垂式:東山動物園、湘南モノレール、千葉都市モノレール)がありましたが、東芝式は東芝の独自開発による国産跨座式モノレールです。連接台車を採用して急曲線を曲がりやすくしたのが特徴で、車体には東急車両製のステンレス車体を用いました。また、プレストレストコンクリート桁(PC桁)を合計59連用い、直線桁、緩和曲線桁、曲線桁を組み合わせて8字の路線(曲線半径50m、軌道延長860m)を構成しました。奈良ドリームランドのモノレールは、モノレールの軌道としてわが国で初めてPC桁を用いた路線でした。(小野田滋)
”奈良ドリームランドモノレール(奈良県奈良市)”番外編
今回は、跨座式モノレールですね。
ドボ鉄第86回で紹介した湘南モノレールは懸垂式だったが、今回の奈良ドリームランドモノレールは日本最初の跨座式だ。
でも遊園地のモノレールって、ほとんどなくなっちゃいましたね。
ああ。昔はジェットコースターやコーヒーカップ、メリーゴーラウンドと並んで遊園地の定番だった。
何で遊園地だったんですか?
当時のモノレールは近未来の乗物として期待されていたが、まだメーカー各社とも試作段階だったから、とりあえず遊園地で試用したといういきさつがある。
遊園地で試したってことですね。
空中を移動するという非日常的な体験ができるから、子供たちにも大人気だった。
まさにドリームランドですね。
奈良ドリームランドのモノレールは遊具扱いだったから、正式な鉄道ではなかった。
ってことは、ジェットコースターと同じってことですか?
そういうことになるな。
でも、遊具とは思えない本格的なモノレールですよ。
奈良ドリームランドのモノレールは、駅は1箇所だけで、乗客は輸送機関として利用して別の場所に移動するわけではない。だから遊具扱いだった。
たしかに、平面図を見ると8の字を描いて、同じ場所に戻ってますね。
ジェットコースターも乗った場所にまた戻ってくるから同じことだ。
違った場所に駅を設ければジェットコースターも輸送機関ってことですね。
理屈ではそういうことになるな。実際に、「エコライド」という名称で、ジェットコースターの原理によって公共交通機関を実現するための実証実験も行われたぞ。
ジェットコースターで通勤ができれば、毎日が楽しいですね。
位置エネルギーを利用するから動力も不要で、省エネルギーな輸送手段として期待されている。
乗りながら、思わず両手でバンザイしちゃいそうですね。
お前さんは絶叫系を期待しているのか?