高度成長期の神戸市では、急増する港湾貨物の取扱量を背景として、貨物輸送の中心となりつつあるコンテナ輸送に対応した新しい埠頭の建設を計画し、新港突堤の沖合に、新しい埋立地としてポートアイランドの造成を開始した。ポートアイランドは、港湾施設としての機能だけではなく、商業用地、産業用地、住宅用地、緑地などが配置され、生活を営むための港湾都市として位置付けられた。
埋立工事に必要な土砂は、横尾、名谷、西神総合運動公園地区の開発などで発生した土砂や建設残土を利用し、ベルトコンベアーによる長距離運搬を行って埋立地へ搬送した。ポートアイランドの造成事業は「山、海に行く」を合言葉に、1966(昭和41)年に工事を開始し、1981(昭和56)年に完成した。
課題となったポートアイランド地区への交通手段として、開発中の新交通システムの導入が決定した。当時の新交通システムは、1972(昭和47)年に京成電鉄の谷津遊園の遊具として用いられたのち、1975(昭和50)年開催の沖縄海洋博では期間限定で使用された。
新交通システムを運営する会社として1977(昭和52)年に神戸新交通が設立され、1981(昭和56)年2月5日に「ポートライナー」の愛称で営業を開始した。神戸新交通は日本最初の新交通システムの実用路線となり、2006(平成18)年には神戸空港への延伸線も開業して、現在に至っている。
絵葉書には、六甲山を背にしてポートライナーの車両が行交い、後方には道路橋の神戸大橋が架かっている。その東側に隣接して、単弦アーチリブが特徴的な下路ローゼ橋のポートピア大橋が架かり、新しい交通機関にふさわしい景観を演出している。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2023年3月号掲載)
Q&A
新交通システムは鉄道ですか?
「鉄道事業法施行規則」という法令の第四条「鉄道の種類」の中で「案内軌条式鉄道」として鉄道の一種に含まれています。「案内軌条式」は走行路(ガイドウェイ)を走行する鉄道の総称で、走行路の中央または側壁にある案内軌条をガイドとして走行します。また、走行にはゴムタイヤを使用しています。都市交通では中容量の交通機関として位置付けられ、路面電車と同様にバスと一般の電車の中間的な交通機関として利用されています。(小野田滋)
”神戸新交通ポートライナー・ポートピア大橋(神戸市中央区)”番外編
師匠。ポートライナーは屋根にパンタグラフが見あたりませんけど、蓄電池か何かを使ってるんですか?
ガイドウェイの側壁の部分に電気を通している。
側壁?
正確には側壁に電車線を取り付けている。側方集電式と呼んでいるぞ。
あっ。写真にも写ってますね。
パンタグラフも床下にある。
……?
編成写真の先頭車に写っている赤いヒゲのような部分だ。
でもヒゲが3本ありますよ。プラスとマイナスともうひとつは何ですか?
ポートライナーは三相交流を使っているから、線が3本必要だ。
直流じゃないんですね。
新交通システムでは直流電気を使っている会社もあるが、三相交流は設備を簡単にできることや地上設備が複雑にならないことから、一部で使われている。
車輪もゴムタイヤを使ってるんですね。
ゴムタイヤを使った最初の鉄道を知ってるか?
パリの地下鉄が最初だって聞いたことがありますが。
たしかに、パリの地下鉄が最初だが、鉄レールも併用していた。
純粋なゴムタイヤじゃないってことですね。
ゴムタイヤだけで最初に走ったのは、カナダのモントリオール地下鉄だ。
日本でも、札幌市の地下鉄で走ってますよね。
モントリオールが1966年開業で、札幌が1971年開業だから5年後ということになる。
札幌オリンピックの直前ですね。
札幌大会は1972年だから、その前年に開業したことになるな。
「虹と雪のバラード」ですね。
懐かしいな。トワ・エ・モワを知ってるってことは、さては昭和の生まれだな。