海岸沿いにある集落は漁や養殖をするとともに、山地の斜面を農地として利用してきた。つまり、身近な環境にある食料資源を複合的に活用し、生業としてきた。農地で育てる作物は、自給自足の生活をするための穀物であったが、次第に桑や芋類、柑橘などの商用作物になっていく。職業については、特に高度経済成長期以降は建設業など第二次産業と兼業し、農業や漁業の第一次産業のみで成り立つライフスタイルは珍しくなった。海岸沿いの集落の大きな特徴の一つは、山の斜面から海岸までのそれぞれの地形に即した多様な土地利用がなされながら、強い関連性を持っていることである。講や氏子などの社会的な組織と相互に影響し合い、必然的な集落の形態と農地の景観がつくられていった。しかし、現在では生活と生活によって成り立つ景観との関係がなくなりつつある。変わりゆく生活<代謝機能>が生きたものとするためには地域だけでなく、そこではない場所で生活する人々の価値観を含め、何によって今までの生活が成り立っていたのかを問われている。(金子)
参考文献
宇和島市:宇和島市遊子水荷浦地区景観計画,2007.
種別 | 棚田・段畑 |
所在地 | 愛媛県宇和島市遊子 |
規模 | 5ha |
備考 | 2007年 重要文化的景観 |