四国インフラ011 神山・上勝・佐那河内

地域の中と外と一緒に促す<新陳代謝>の仕組みづくり


神山町、上勝町、佐那河内村。いずれも徳島県の中山間地域だ。この3つの自治体には、これからの地方都市、集落の暮らしについて考えていくヒントがたくさんある。
神山町にある神山つなぐ公社は、「まちを将来世代につなぐプロジェクト」を実現していくために設立された。プロジェクトの内容はアート、住まい、しごと、学び・教育、まちの手入れ、農と食文化、と多岐にわたっている。いずれも大事にしていることは、「実行のための計画をつくる」「役場と住民(民間)の協働で実現してゆく」ことで、「子供たちの可能性をひろげる生き方を、地域として選んで」いくことだ。「かまや」の取り組みや高校との連携、起業者やサテライトオフィスの誘致など、子供たちが大人になった時に地域で生きていくための取り組みが始まっている。
上勝町は「いろどり」で有名になった町だ。葉っぱビジネスとして、集落の高齢者がタブレット端末を使いながら、食卓に「いろどり」を添える葉や実を出荷する様子を見たことがある人もいるのではないだろうか?その取り組みの様子は映画にもなっている。重要文化的景観に選定された樫原の棚田など、集落ごとに特徴的な棚田の風景が広がり、その風景は江戸時代の絵図と比較しても殆ど変化していないという。また、平成15(2003)年には上勝町ゼロ・ウェイスト宣言を発表し注目を集めたことも、記憶に新しい。そんな上勝町に暮らす人々の暮らしについて聞き書きしてまとめた本も、出版されている。
佐那河内村は、神山町や上勝町に比べると面積が1番小さな自治体で、徳島県唯一の村だ。その歴史は長く、記録をたどると間もなく開村から千年を迎えようとしている。徳島市内まで車で30分と通勤圏内にあるものの、村外への人口流出が続いていた。そのため、移住支援だけではなく地域内外の交流を促して村の風景や生業とともに存続させていくために、地域交流拠点「新家」が平成29(2017)年に完成した。この拠点は、佐那河内村に暮らす人達の集まる場所となるよう地域内の交流に軸足を置きながら、ウェブサイトや「さなのごちそうだより」などとともに佐那河内村の情報発信を村内外に向けて発信している。この拠点の運営は始まったばかりだが、「つづくむら さなごうち」を目指して村の人たちと一緒に歩み始めている。
神山町も、上勝町も、佐那河内村も、大事にしているのは「地域の人」の暮らしが「持続すること」だ。そのために、他自治体や他組織との情報交換や連携にも積極的だ。今を生きる私達ができることから、次の世代へ何を継いでいくのか。地域の中と外と一緒に構築しつつある<新陳代謝>を促す仕組みとともに、注目が集まっている。(尾野)

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参考文献

NPO法人グリーンバレー,信時正人:神山プロジェクトという可能性 -地方創生、循環の未来についてー,廣済堂出版,2016.
笠松和市,佐藤由美:持続可能なまちは小さく、美しい 上勝町の挑戦,学芸出版社,2008.

種別 地域
所在地 徳島県名西郡神山町 勝浦郡上勝町 名東郡佐那河内村
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