山の斜面に生活の場を築くためには、平らな土地を造成し、近くで採れる石を使って壁をつくる必要があった。山奥の斜面に住むことは現代の生活スタイルからすれば不便だが、合理的な理由があった。谷筋を流れる水が得られやすく、川の氾濫を心配する必要がない。また、日当たりが良いため乾燥させた保存食がつくりやすく、居住環境も良い。家と田畑の立地も土地や気候をきめ細かく読み取り、決められた。谷筋は土が堆積しやすく肥沃であるため、田畑をつくり、尾根筋には強固な地盤で湿気が少ないため、家を建てた。地形に沿って石積みと平地を築き、それぞれの役割に適した土地利用をしていた。また、海岸沿いでは、風除けのために家の前に石積みを築き、水路を石積みでつくるなど、石は壁をつくるだけでなく、頑丈な建設材料として様々なところに使われている。農村の生活は、食べたものが肥料となり、近隣の木材を利用し、崩れた石材を再利用するなど、極めて狭い範囲で資源が循環する<代謝機能>が優れたライフスタイルである。(金子)
参考文献
NPO法人棚田ネットワーク編:全国棚田ガイド TANADAS,家の光協会,2017.
種別 | 棚田・段畑 |
所在地 | 高開の石積み:徳島県吉野川市美郷 外泊集落:愛媛県南宇和郡愛南町 千町の棚田:愛媛県西条市千町乙 |
規模 | 千町の棚田:耕作面積60ha |
備考 | 高開の石積み:にほんの里100選(平成21年) 外泊集落:未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選(平成18年)、美しい日本の歴史的風土100選(平成19年) |