四国インフラ033 純平・八千代タワー

海辺の<白血球>


太平洋側の広い範囲で、南海トラフ巨大地震・津波が警戒されている。土佐湾に面した低平地に中心部をもつ中土佐町久礼地区でも、役場庁舎、保育所、消防分署を高台移転する大がかりな公共施設移転計画が立てられている。漁師町・久礼では、かぎられた平地に低層住宅が密集している。その海岸近くに二つの塔が頭ひとつ突き出ている。

中土佐町第1号津波避難タワー(通称:純平タワー)は平成26(2014)年に完成した、鉄骨造の地上3階建ての津波避難タワーである。螺旋形のスロープと階段で乗降でき、2・3階には防災倉庫、屋上にはヘリコプター救助スペースがしつらえてある。翌平成27(2015)年に完成した、中土佐町第2号津波避難タワー(通称:八千代タワー)も、同規模の400人を収容できる施設だ。最初の避難階である2階は、この辺りの想定津波高さの海抜約12.8mから3.6mほど高い位置に設定されている。いざという時には高齢者でも避難できるような徹底した「逃げ込みやすさ」が確保されているだけでなく、シンプルなアウトラインや、鉄骨のごつさを隠すようなパネルに周辺の文化的景観(「久礼の港と漁師町の景観」として重要文化的景観に選定されている)への配慮が滲む。また、展望台として日常的に大いに利用されることが、緊急時にも効いてくるであろう。各所に置かれたベンチや、1号の木で仕上げた天井にその意志が見てとれる。このようなデザイン面での配慮が評価され、純平タワーは平成28(2016)年のグッドデザイン賞を受賞している。

<白血球>は、人体を攻撃せず、外敵を識別して駆逐する。中土佐町の二つの<免疫機能>も、津波に対して抵抗こそすれども、日常の海辺の景観へ溶け込み、人々の暮らしに寄り添うように静かに佇んでいる。(尾崎)

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種別 津波避難タワー
所在地 高知県中土佐町
構造形式 鉄骨造
規模 地上高:19.99m(1号)、23.19m(2号) 避難対応人数:約400人(1号、2号)
竣工 2014年(1号)、2015年(2号)
管理 中土佐町
設計者 株式会社若竹まちづくり研究所・佐藤八尋、株式会社第一コンサルタンツ・楠本雅博
備考 平成28(2016)年グッドデザイン賞

グッドデザイン賞タワー詳細(若竹まちづくり研究所)
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