四国インフラ046 佐田岬半島の石垣群

石積みのパッチワーク


佐田岬半島は、中央構造線に沿って四国西端に突き出す約40kmのごく細長い半島である。北に瀬戸内海伊予灘、南に宇和海。豊後水道に屏風のように突き出ている格好だ。八幡浜より車で入ってから先端までが長い。何しろ40kmある。リアス式の山間の道から、美しい海辺の風景が一瞬見えたかと思うとすぐに見えなくなる、歯がゆい思いでアクセルを踏むこと一時間。十分に焦らされたところで佐田岬の先端付近にある正野野坂に辿り着く。

ここの石垣は圧巻だ。高さが約4m、見上げると家屋の2階部分が半分以上隠れる高さだ。それが約140m続く。ちょっとした城壁のようだが、この石垣は半島に吹き付ける強風を防ぐために築かれたもので、出入りのための開口やスリットがある。緑がかった色合いの石が多いのは、佐田岬半島で多く採れる「伊予の青石」と呼ばれる緑泥片岩(りょくでいへんがん)が用いられているからだ。地場の素材ならではの自然な統一感がある。一方で、石垣に沿って歩くと、ところどころパッチワークのように石の積み方が異なっていることに気づく。あるところは平べったい石を水平に積み上げているが、あるところではそれらを斜め45°に傾けて積む「矢羽根積み」が用いられている。これは台風などによって破壊されたところを補修しながら使い続けてきた証。時代によって積み方が異なるのだ。

この半島では、このような石垣・石積みが各所で見られる。風や波といった自然の猛威を、地場の「石」という自然で除ける。時に風波に屈すれば、また積み直す。そうして徐々に抵抗力を増すこの石垣群は、さながら人体の<免疫力>のようだ。(尾崎)

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種別 石積み
所在地 愛媛県伊方町
構造形式 野面積み・矢羽根積み
設計者 不詳
備考 未来へ残したい漁業漁村の歴史文化財産百選
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