四国インフラ076 満濃池・満濃池樋門

讃岐の水がめ


丸亀平野の南に位置している満濃池は、香川県内に点在する約1万4千余りのため池の中でも最大のかんがい用ため池である。一般的なため池は四方を堤防で囲まれているが、満濃池は川を堰き止め、谷を利用して膨大な貯水と水量調整をおこなうダムと同じ基本構造をしている。

大宝年間(701~704)に築堤された後、度重なる洪水により決壊していたところを弘仁12(821)年に弘法大師空海が工事を監督し、今見る逆アーチ形状のアースダムに修復したと言われている。安政元(1854)年の大地震では石の樋管の損壊が原因で決壊したことから、明治2(1869)年、樋管に代えて底樋隧道と樋門が築かれた。樋門の坑口周りは五角形の迫石でアーチを描き、坑門の装飾も上品で落ち着いている。そこから池の水を放流する通称「ゆる抜き」は、毎年6月半ばにおこなわれ、地域の一大風物詩となっている。

流れ出た水は、平野に網の目のように張りめぐらされた用水路<血管>を通り、田へ、あるいは子池、孫池と呼ばれる下流の小さな池<細胞>へと供給される。現在その受益面積は、満濃池のあるまんのう町のみならず、丸亀市、善通寺市、多度津町、琴平町の2市3町を含む4,600haに及ぶ。広大な水田にかんがい用水を供給し続け、丸亀平野一帯を潤す文字どおりの水がめは、人の暮らしを支える大きな大きな<代謝機能>である。(板東)

(赤色立体地図:アジア航測株式会社 国土地理院承認番号 平28情使第1285号 / 航空写真:Google Earth)

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参考文献

香川県編:ふるさと香川の歴史,四国新聞社,1992.
大林組:満濃池 季刊大林No.40,大林組広報室,1995.

種別 ダム
所在地 香川県仲多度郡まんのう町
構造形式 満濃池:逆アーチ形状のアースダム 満濃池樋門:石造
規模 満濃池:総貯水量15400000㎥ 流域面積12.8k㎡ 湛水面積1.4k㎡ 満濃池樋門:間口3.5m 高さ4.2m 袖壁付き 底樋管延長197m
竣工年 満濃池樋門:明治3(1870)年
管理者 満濃池土地改良区
備考 満濃池樋門:平成12(2000)年登録有形文化財(建造物)
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