四国インフラ021 長安口ダム

最先端の肉体改造を行うダム


長安口ダムのある那賀町は、豊富な降雨量と温暖な気候によって林業が盛んで、木頭杉によって財を成してきた。道路が整備されるまでは木材を那賀川に流して下流まで運んでおり、その技術は木頭杉一本乗り大会で見ることができる。那賀川流域の海川では日本一の日降水量1,317mmを記録しているが、これはバケツをひっくり返したような時間50mmの雨が1日続いても足りない量であり、そういった激しい雨を伴う台風により度々大規模な洪水が発生している。

那賀川の下流部では、水田地域の中に発光ダイオード等の精密機械工場や製紙工場が並んでいる。そのため、農業・工業用水の確保が重要であるが、冬には少雨となるため、春渇水が常態化している。

毎年のように洪水と渇水を繰り返す過酷な自然状況にある那賀川で、長安口ダムは唯一洪水調節機能を持ったダムであり、寄せられる期待は大きい。それを受けて、治水・利水・環境面におけるダム機能向上を図ることを目的として長安口ダム改造事業着手し、国内最大級のゲートを2門増設することになった。既設堤体の切削量は1門あたり高さ約30m×幅10mに及び、それもダムを運用しながら、国内初の大規模切削工事を行っている。

建設時に右岸側のコンクリートプラントへの工事用道路として作られた下流の吊橋から、ダムの下流面を見ることができる。長安口ダムは60歳を超えてなお肉体改造を行い、最新技術を最大限投入して問題を解決しながら那賀川流域と生きて行く。(高橋)

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種別 ダム
所在地 徳島県那賀町
構造形式 重力式コンクリートダム
規模 堤高85.5m 堤頂長200.7m 総貯水容量5427.8万m3
竣工年 昭和31(1956)年 平成25(2013)年改造工事着工 平成31(2019)年完成予定
管理者 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所

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