ドボ鉄095学園前の駅

小田急電鉄小田原線・玉川学園前駅(東京都町田市)


 駅名に学校名や企業名を冠した駅は、現在ではさほど珍しくないが、1927(昭和2)年に新宿~小田原間が全通した小田急電鉄では、学校の最寄り駅として開業と同時に成城学園前駅を設置したほか、1929(昭和4)年に玉川学園前駅を開設し、環境の良い文教地区であることをアピールした。学校名を駅名に用いることによって、学校側にとっても校名をPRすることができ、両者のイメージアップにつながった。
 成城学園は、もともと東京市内の牛込(現在の新宿区)に校舎があったが、関東大震災を契機に郊外への移転と校舎の拡張が計画され、1927(昭和2)年に現在の地に移転し、同時に成城学園前駅が開設された。当時の校長事務取扱であった小原國芳(1887~1977)は、移転にあたって新駅を学校側の負担で建設し、周辺を宅地開発することで得た収益を新校舎の建設費に充てた。しかし、同校が帝大進学のための予備校のような存在となりつつあることを憂慮し、新たな理想教育を求めて玉川学園を新設した。
 玉川学園の設立は、成城学園の移転と同様に、駅の新設と住宅開発を同時に行なった。玉川学園前駅は1929(昭和4)年4月1日に開業し、一週間後の同年4月8日に玉川学園が開校した。「玉川學園驛」(ママ)と題した絵葉書は、新設されたばかりの駅を撮影したもので、三角屋根の瀟洒な駅本屋が、学園駅にふさわしい新鮮な雰囲気を演出した。
 その後、教育者として両校に関わった小原は玉川学園の経営に専念し、1942(昭和17)年には系列校として興亜工業大学(現在の千葉工業大学)を設立したほか、1947(昭和22)年には玉川大学を設立して同校の学長となった。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2021年4月号掲載)

 

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Q&A

文中の専門用語などを解説します

Q

学校名を駅名にした駅は、ほかにもありますか?

A

全国各地にありますから、時刻表の路線図などで探してみてください。正式な学校名もあれば、略称の場合もあります。また、学校が誘致されずに駅名だけが残った「大泉学園駅」(西武鉄道池袋線)や、学校が移転してからもそのまま使い続けている「都立大学駅」「学芸大学駅」(東急電鉄東横線)などの例もあります。このほか、隣接している学校名を連名で駅名とした「中央大学・明星大学前」(多摩都市モノレール)や、学校名が無い「中学校前」(山万ユーカリが丘線)といった駅名もあります。(小野田滋)


”玉川学園前駅(東京都町田市)”番外編

師匠とその弟子・小鉄が絵はがきをネタに繰り広げる珍問答

小鉄

今回は、「ピポーの小田急」ですね。

師匠

ザ・ピーナッツとボニー・ジャックスのCMソングだな。

小鉄

小田急、小田急、ピポピポ~♪

師匠

玉川学園前駅といえば、小田急で最初の自動出改札装置を使った駅だったんだぞ。

小鉄

えっ、いつのことですか?

師匠

記録によれば、1970(昭和45)年7月19日に使用を開始した。

小鉄

そんなに古いんですか!

師匠

しかし、試作だったんで間もなく廃止されてしまったんだ。

小鉄

それは残念ですね。

師匠

自動出改札装置が設置されたのは玉川学園前駅だけだったし、ほかの鉄道会社もまだ導入を躊躇していて広がらなかった。

小鉄

幻の自動改札機ですね。

師匠

これがその時のパンフレットだ。

小鉄

師匠は何でも集めてるんですね。

師匠

パンフレットはタダで配っているから、お金がかからない貴重なコレクションアイテムだ。

小鉄

ただの紙クズじゃないんですね。

師匠

失敬な。パンフレットは、一般向けにわかりやすく、手短に、要領よく説明しているから、歴史資料としての価値も高いぞ。

小鉄

これを見ると、定期用と切符用で機械が分かれてたんですね。

師匠

自動出改札装置は関西では割と早い時期に普及したが、関東で普及するのはだいぶ後になってからだな。

小鉄

でも、自動出改札からICカードまで、あっと言う間に進化しましたね。

師匠

もう切符を買う機会も少なくなったな。

小鉄

紙の切符が珍しくなっちゃいましたね。

師匠

そういえば、昔集めた切符のコレクションが大量にあるんだが、欲しければ譲るぞ。

小鉄

紙クズ……じゃなくて貴重なコレクションだから、師匠がそのまま持っててくださいよ。

駅周辺開発
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