大阪周辺における鉄道貨物輸送網の整備は、1918(大正7)年から北方(ほっぽう)貨物線の建設に着手して開始された。北方貨物線は、淀川の右岸を短絡する東海道本線のバイパス路線として機能したため、大阪駅に発着する貨物を扱うために、梅田貨物駅が新設された。
大阪駅は、それまで旅客駅と貨物駅の両方の機能を備えていたが、どちらの輸送力も限界に達しつつあったため、旅客駅と貨物駅を完全分離し、従来の大阪駅は旅客扱いのみとして高架化することとした。また、梅田貨物駅のほかに、吹田操車場、宮原客車操車場の新設、城東貨物線、大阪臨港線の新設などの改良工事を進め、大阪周辺の鉄道輸送の再構築が大規模に行われることとなった。
梅田貨物駅は、大阪駅の西北に約28ヘクタールの広大な敷地を確保し、貨物の積卸ホームのほかに鮮魚専用ホーム、家畜専用ホームを設け、用品庫や機関区などの業務施設を併設した。工事は鉄道省大阪改良事務所によって進められ、梅田貨物駅と梅田貨物線は、1928(昭和3)年12月1日より使用を開始した。
「梅田駅構内ノ一部」と題した絵葉書には、広大な梅田貨物駅の構内と発着する貨物列車の姿がおさめられ、林立する照明設備が昼夜を分かたぬ鉄道輸送を象徴している。梅田貨物駅は、戦後もコンテナ輸送に対応した設備の拡充が行われるなど、大阪の貨物輸送の要衝として機能したが、2013(平成25)年3月末で廃止され、梅田貨物線のみが東海道本線と大阪環状線を短絡する路線として残り、貨物駅の跡地は大規模な再開発事業が進められている。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2013年7月号掲載)
Q&A
貨物駅と操車場は違うんですか?
貨物駅は、貨物の積卸しを行う場所で、旅客駅とともに「駅」に分類されます。「操車場」は、貨車の入換えや組成を行うため場所で、「駅」と「操車場」を総称した上位の概念を「停車場」と呼びます。現在では、コンテナによる直行輸送方式が主流となって貨車の入換作業を行うための操車場は廃れてしまい、着発線荷役方式による「貨物ターミナル駅」が普及しています。(小野田滋)
”梅田貨物駅(大阪市北区)”番外編
JRの駅名は「大阪」なのに、阪急や阪神は「梅田」なんですね。
今回紹介した貨物駅も、駅名は「梅田」だ。
同じ場所にあるのに、駅名がそれぞれ違っていると混乱しないですか?
関西の人は慣れてるが、関西以外の人にはわかりにくいので、2019(令和元)年に阪急も阪神も頭に「大阪」を足して「大阪梅田」に駅名を改称した。
大阪駅の周辺は、迷路みたいですからね。
大阪駅でタクシーに乗って、「梅田まで!」と頼んだら、その場で降ろされたという話もあるくらいだ。
関西のお笑いネタにありそうですね。
ところで、大阪駅は1874(明治7)年に大阪~神戸間が開業した時から同じ場所だったって、知ってるか。
駅は開業したら、ほとんど場所を変えないと思ってましたけど。
だが、大きな駅はいくつか場所を移転しているぞ。
たとえば?
東海道本線でも新橋駅や横浜駅、名古屋駅、京都駅、神戸駅は開業後に移転している。
あっ、ドボ鉄49回で紹介した博多駅もそうでしたね。
大阪駅は、移転こそしていないが、高架化されているから、昔のままというわけではない。
大阪駅の北西側は、梅田スカイビルくらいしか目立つ建物が無かったから、完成すると景色が激変しますね。
JRの新駅もできるからな。
駅名がどうなるのか、今から楽しみですね。