四国インフラ067 大宮橋

山林に佇む不遇の名橋


愛媛県西条市の市街地から自動車で1時間弱。四国山地山中の巨石がころがる荒々しい渓谷に分け入ってゆくと、こつ然と瀟洒な橋が姿を現す。大宮橋である。渓谷を一跨ぎにするアーチの力強さは訪れた者を圧倒し、アーチの上に小気味よく並ぶ列柱と、その列柱上部の甘美なまでになめらかな曲面は、周囲の荒々しい景観に引きたてられ、見る者の目を奪う。しかしこの名橋、人の目に触れ機会はほとんどない。

大宮橋は、昭和2(1927)年、愛媛県西条市から四国山地を抜け高知県へと至る幹線道路の一部として建設された。そのため、四国の<大動脈>たる格調が求められ、細部の意匠にまでこだわって建設された。西条市から大宮橋へ至る道中の橋は鋼トラス橋の千野々橋をはじめ立派なものが多く、このことからも<大動脈>建設にかけた地元の意気込みがどれほどのものだったか、容易に想像できる。

しかしこうした地元の熱意とは裏腹に、時を同じくして<大動脈>の建設は別ルート(現国道194号線)でも検討されていた。ルートの候補となった町間で熾烈な誘致合戦がおこなわれ、その結果大宮橋ルートは敗れ去った。

格調高い意匠を携えつつも、その<循環器>機能を果たすことがついに叶わなかった不遇の名橋は、いまもまだ四国の山中に気高く佇んでいる。(白柳)

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参考文献

土木学会編:日本の土木遺産 近代化を支えた技術を見に行く,講談社,2012.

種別 道路橋
所在地 愛媛県西条市西之川
構造形式 鉄筋コンクリート開腹アーチ橋
規模 橋長42.9m 幅員4m
竣工 昭和2(1927)年
管理者 西条市
備考 平成17(2005)年選奨土木遺産
土木学会選奨土木遺産
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