四国インフラ051 屋根付橋

田丸橋・弓削神社参道橋・鞘橋


愛媛県喜多郡内子町を流れる麓川の中流域には、屋根付橋が架かっている。かつてはこの川筋に10橋あったとされる屋根付橋は、3橋現存している。その内のひとつ、「田丸橋」は、屋根が杉皮葺きの切妻屋根という珍しい木造の橋である。本来、橋の役割といえば、「人やモノを運ぶ地域にとっての循環器的機能」というべき生活道路としての役割があるが、そのような機能ならば屋根は不要である。実はこの橋では、かつての人々が農作物の保管場所として利用したり、井戸端会議の場として使われていたのである。

緒方氏(下記引用文献)によれば、屋根が付けられたことによって、新たな価値が生まれ、結ぶ機能から集う機能へと進化したという。この木造の屋根付橋のある内子町は街並み保存や景観に対して意識の高い地域であり、橋の周囲も美しい風景が残る。木の香りのする屋根付橋に立てば、当時の人々の暮らしに思いを馳せることができるであろう。

麓川の上流には、室町時代に建てられたとされる弓削神社があり、弓削池が社殿を囲んでいる。この弓削神社の前には、参道としての「太鼓橋」が架かり、田丸橋と同じく屋根付橋として知られている。

また、屋根付橋は四国内にもう一ヶ所現存している。香川県仲多度郡琴平町を流れる金倉川に架かる「鞘橋」である。同じ屋根付橋といってもこちらは、切妻型の銅葺き唐破風屋根の重厚感のある姿で、明治2(1869)年に改築された。明治38(1905)年に現在地に移築され、主に金刀比羅宮の神事の際に使用され、神聖な空間として保存されている。(片岡)

 

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引用文献

緒方英樹:柔らかな土木遺産 屋根のある橋・田丸橋(土木紀行),土木学会誌88-7,pp.52-53,2003.

種別 橋梁
所在地 田丸橋:喜多郡内子町河内 弓削神社参道橋:喜多郡内子町石畳東 鞘橋:仲多度郡琴平町阿波町

 

土木学会選奨土木遺産
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