四国インフラ040 中筋川ダム

凜然としたダムの「顔」


高知県南西部の雄々しく連なる山々に挟まれた細長い平地を流れる中筋川は、流域の年平均降雨量が約2,900mmと極めて多い。そしてこの雨は9月に集中する。ここは台風銀座なのだ。周囲の山々へ降り注いだ雨が一気に中筋川へと流れ込み、また標高差が少ないことから、四万十川からの背水(本川である四万十川の水位が上がることで中筋川の水が流れにくくなり、溢れやすくなる)の影響もあり、平地の住宅地が洪水被害を受けることも少なくなかった。この治水対策をはじめ、利水、工業用水等のために建設されたのが中筋川ダムである。

このダム、どことなく端正で凜々しい印象を与える。堤体下流側には一面に階段状の凹凸がついており、その陰影が縞模様のテクスチュアをつくっている。これは、抑揚のない巨大な「面」の出現を防ぐとともに、越流水の勢いを減衰させる効果を持つ。また、中央部にある二つのオリフィス吐口(放水用の穴)は高さが異なるものの、開口部の形状を揃えることで左右対称に並んでいるかのように見せている。同様に堤体中央にある二つの塔(それぞれ水位計塔とエレベーター塔であり、必要な高さは異なる)の高さを揃え、左右対称の「顔」をつくっている。さらには、高欄に照明を仕組むことで、照明柱による煩雑な印象を避けるなど、きめ細かい。これら入念なデザインが、このダムの凜とした「顔」をつくっている。ごてごてとした装飾ではなく、素肌美人のような、自然な「顔」である。(尾崎)

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参考文献

岡田一天・和田孚・尾作悦男:中筋川ダム,土木学会誌,Vol. 77,No.5,p80-83,1992.

種別 多目的ダム
所在地 高知県宿毛市
構造形式 重力式コンクリートダム
規模 堤高73.1m 堤頂長217.5m 総貯水容量1200万㎥
竣工 平成10(1998)年
管理 国土交通省四国地方整備局
設計者 建設省四国地方整備局(当時)、下流面形状検討委員会、岡田一天
備考 平成13(2001)年土木学会デザイン賞優秀賞
中筋川総合開発工事事務所ダムフォトライブラリー土木学会デザイン賞
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