ドボ鉄118ジョルダン車の登場

絵はがき:撮影地不明(新潟県長岡市内?)


 いわゆる除雪車には、ラッセル車、ロータリー車、マックレー車、ジョルダン車などいくつかの種類があり、それぞれの用途にあわせて用いられた。このうち、ジョルダン車は、アメリカのニユーヨークセントラル鉄道のカナダの系列会社で保線を担当していたオズワルド・F・ジョーダン(ジョルダン)によって1900(明治33)年に考案された。
 当初は、保線作業で道床バラストの砂利をならすための車両であったが、除雪作業にも用いられるようになり、ジョーダンはほどなくしてジョルダン・スノーファイター社を設立して、「ジョルダン式スプレッダー」と称して販売を開始した。日本でも1926(大正15)年に2両が輸入されてキ400形(のちのキ700形)と称し、これをベースとして国産化された。
 ジョルダン車は、別名「広幅式雪掻車」とも呼ばれ、その名の通り、車両限界(線路横断面方向の車両の最大寸法を示した基準値)を超過して左右に翼を広げて除雪作業を行うことができ、豪雪には適さなかったが、停車場や操車場構内の除雪作業用に重宝された。
 「雪の長岡市・排雪車ジョルダン」と題した昭和初期の絵葉書には、当時の最新式だったジョルダン式雪掻車の姿がおさめられているが、おそらく信越本線の長岡駅か長岡操車場構内での除雪作業の様子を撮影したものと推定される。長岡は当時、鉄道省仙台鉄道局の管轄区域だったため、車体には「仙」の表記がなされている。
 ジョルダン車は自走できなかったので、後部に蒸気機関車が連結され、翼の開閉には圧縮空気を利用した。キ400形タイプのジョルダン車は1997(平成5)年頃まで北海道に在籍していたが、現在では博物館などで数両が保存されているに過ぎない。(小野田滋)(「日本鉄道施設協会誌」2012年1月号掲載)

 

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Q&A

文中の専門用語などを解説します

Q

鉄道の雪掻車(ゆきかきしゃ)にはどんな種類がありますか?

A

 鉄道の雪掻車は、基本的に「ラッセル式」「回転式」「掻寄(かきよせ)式」「広幅(ひろはば)式」の4種類に大別されます。
1.ラッセル式……最も一般的に使われる雪掻車で、単に「雪掻車」「排雪車」と称することもあります。両側に掻き分ける単線式と、片側のみに掻き分ける複線式の2種類が使用され、雪を線路の外側に排出します。
2.回転式……ロータリー車とも呼ばれ、高速回転する矢羽根で雪を線路の外に吹き飛ばします。大量の雪を一度に処理できるため、主として大雪の際に出動します。
3.掻寄式……マックレー車とも呼ばれ、ロータリー車の先に走らせて(または直接連結して)、線路の両脇の雪を中央に掻き集めてロータリー車で飛ばしやすくするための車両です。
4.広幅式……ジョルダン車とも呼ばれ、駅の構内や操車場、車両基地などの広い面積に広がる雪を効率よく除雪できるという特徴があります。
 なお、現在では「除雪車」「排雪車」などとも呼ばれますが、ジョルダン車を導入した頃の鉄道では「雪掻車」という総称が一般的でした。(小野田滋)


”ジョルダン車”番外編

師匠とその弟子・小鉄が絵はがきをネタに繰り広げる珍問答

小鉄

除雪車にはいろいろな種類があるんですね。

師匠

それぞれに役割があるから、場所や積雪量などで使い分けている。

小鉄

自分では走れないんですね。

師匠

昔は蒸気機関車が後押ししながら走っていたが、最近はディーゼル機関車や小型のモーターカーを用いた自走式の除雪車が増えてきた。

小鉄

絵葉書のジョルダン車の側面に「キ405」って大きく書いてありますけど、何か意味があるんですか?

師匠

その少し右側に小さい文字で「形式キ400」と書いてあるから、「キ400形式」の「5」号車という意味になる。番号は「400」から始まるから、正確には「6」番目に製造された車両ということになるかな。

小鉄

「キ」は「雪掻き」の「キ」か何かですか?

師匠

「キ」は国鉄で使われていた客貨車の用途記号で、雪掻車は「雪(ユキ)」の「キ」にちなんでいる。

小鉄

だったら「ユ」でもいいじゃないですか?

師匠

実は1928(昭和3)年まで「ユキ」を使っていたんだが、車両称号規程の改正があって、それ以後の用途記号は1文字だけで表すことになった。

小鉄

「ユ」か「キ」のどちらかを選ぶという話になったんですね。

師匠

「ユ」は「郵便車」で使っていたからそちらに譲って、雪掻車は「キ」を使うことになった。

小鉄

400形ってことは、その前にも100形とかあったんですか?

師匠

キ100形という形式はラッセル車で使っていたが、ジョルダン車はキ400形が最初だ。

小鉄

本文に、「アメリカから2両が輸入されて」とありますけど、これもキ400形だったんですか?

師匠

1926(大正15)年にジョルダン・スノーファイター社から2両を輸入して、鉄道省の大宮工場と苗穂工場で組立てて、ユキ400形式の「ユキ400」「ユキ401」としたのが最初だ。

小鉄

まだ「ユキ」の時代ですね。

師匠

国産化されたジョルダン車は1928(昭和3)年から製造が始まるから「ユキ」で登場したか、「キ」で登場したかは微妙なタイミングだが、番号は連番で「402~」とした。

小鉄

その1両が写真のキ405なんですね。

師匠

当時の操作室は木製だったが、のちに鋼製に改良されてさらにキ700形になった。

小鉄

形式番号を調べることによって、車両の歴史もわかるってことですね。

師匠

形式番号は、鉄道車両を管理するための基本情報だから、それぞれの会社ごとに体系的に決められている。

小鉄

鉄道は奥が深いですね。

師匠

鉄道車両の形式番号は、苗字とか名前のようなものだから、これを深掘りするとそれぞれの車両の履歴や沿革が理解できるようになるぞ。

小鉄

これから電車に乗る時は注意してみます。

教科書(第22章)講演録
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