中村駅は四万十川の河口部に位置し、少ない利用者のほとんどが高校生やお年寄りのローカル線の駅である。その駅が2010年に老朽化した駅舎を改修することがきっかけとなり大きく生まれ変わった。従来の改札を廃し、地元産のヒノキを使った自主学習用の机や椅子を配置するなど、電車の待ち時間を豊かに過ごすことができる空間となった。高校生が自習し、その姿を横目で見つつ、大人がそれぞれの時間を過ごす。交通の利便性という観点では地方において鉄道より自家用車のほうが圧倒的に勝っている。そのような状況で、ローカル鉄道や駅の価値が何かという答えの一つが、移動時間や待ち時間を豊かな体験とすることである。モータリゼーションとそれに伴う郊外化が進展した時代に、鉄道と自分の家の間にあり、多くの人と出会う駅が新たな価値を生む<循環器系>としての役割を担うことができる。(金子)
参考文献
株式会社イチバンセン: https://www.ichibansen.com/nakamura-station
種別 | 駅 |
所在地 | 高知県四万十市駅前町 |
構造形式 | 地上駅 |
竣工年 | 昭和45(1970)年、平成22(2010)年リノベーション |
管理者 | 土佐くろしお鉄道株式会社 |
設計者 | リノベーション:株式会社イチバンセン(当時nextstations) |
備考 | 2014年 ブルネル賞駅舎建築部門優秀賞、2010年 グッドデザイン賞 特別賞・中小企業庁長官賞、2012年 土木学会デザイン賞最優秀賞 等他12賞 |