四国インフラ074 善通寺駅舎

五岳山とともに見守り続ける駅舎


高松琴平電気鉄道(ことでん)琴平線とこんぴらさん。旧高松電気軌道長尾線(現在のことでん長尾線)と長尾寺。香川の都市と鉄道は、神社仏閣やお遍路さんに結びついていることが多い。JR土讃線の善通寺駅も、駅から出て五岳山に向かってまっすぐに伸びる道約1kmところに、第75番札所の善通寺がある。善通寺に向かうお遍路さんだけではなく、善通寺市に暮らす人々の交通手段として一役を担っている善通寺駅だが、この駅舎は全国で現存する2番目に古い駅舎と言われ、100年以上の間、善通寺の玄関口として機能してきた。

善通寺駅舎ができたのは明治22(1889)年で、讃岐鉄道会社の駅として開業した。四国で最初に開業した讃岐鉄道会社は丸亀―多度津―琴平間を結ぶ鉄道で、金比羅参りの参拝客の輸送を目的としていた。その後、丸亀―高松間も開通したが、経営状況は芳しくなかった。そのため、明治37(1904)年には瀬戸内海を挟んだ対岸の山陽鉄道に買収され、明治39(1906)年の鉄道国有法の可決・公布により、讃岐鉄道会社の路線も国有化された。その後、時代とともに駅舎の改築が行われたが、明治時代の駅舎の間取りは当時と変わっていない。表玄関やホームといった国指定登録有形文化財に指定されているものは、大正11(1922)年の改築時のものである。明治時代から現在に至るまで、数えきれないほどの人々が、この駅舎を通り、善通寺市内へ、あるいは市外へと移動していった。その歴史は、表玄関の石段のすり減り具合からも想像できる。

何度も改築を重ね、当時とは違う姿になったとしても、善通寺駅舎から見える五岳山の眺めは変わることなく、これからも善通寺駅舎とともに、人々を見送り、出迎えてくれる。(尾野)

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参考文献

土木学会:日本の近代土木遺産 現存する重要な土木構造物2800選[改訂版], 社団法人土木学会, 2005.
森貴知:琴電100年のあゆみ 讃岐路を走って一世紀 多彩な歴史と車両を綴る, JTBパブリッシング, 2012.
後藤洋志:琴電-古典電車の楽園 讃岐に生きる大正ロマンのオールドタイマー,JTBパブリッシング, 2003.

種別 駅舎
所在地 香川県善通寺市
構造形式 木建築物(切妻屋根→寄棟屋根) 鉄骨(古レール)製プラットフォーム
竣工年 明治22(1889)年 大正11(1922)年改築(駅舎) 平成3(1991)年屋根改修
管理者 四国旅客鉄道株式会社
備考 平成14(2002)年 国指定登録有形文化財(建造物)
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