四国インフラ020 那賀川

吉野川に次ぐ第二の<骨格>


那賀川は、那賀町の剣山山系ジロウギュウに水源をもつ、幹川流路延長125km、流域面積874km2の一級河川である。数多くの支流を持ち、山が下流の平野部まで迫っているため、山地面積が全体の92%を占めている。この那賀川では、地震・津波対策や災害に強いまちづくりとして、機能のアップグレードが進められている。

那賀川の上・中流域はV字型の渓谷や蛇行する川の風景が広がっている。上流は高知県との県境に近く、青く澄んだ水の流れを渓谷美とともに楽しむことができる。お盆になると「ひともし」と呼ばれる供養が河川敷で行われてきたが、今では上流域の木頭地区のみだという。この木頭地区は、かつて林業で栄えた歴史がある。当時、山で乾燥し長さを揃えられた木材は支流から那賀川へと流し、更に現在の長安口ダム辺りまで一本ずつ流していた。この木材を流す様子は「木頭の一本乗り(一本流し)」と呼ばれ、職人たちは竿を巧みに操りながら瀬を下っていく技術を持っていた。現在では一本乗りができる人も少なくなったが、夏には「一本乗り大会」を開催し、多くの参加者に技術伝承を行っている。なお、当時の一本乗りの様子を収めた映像は長安口ダム資料館ビーバー館で見ることができる。

中流域は、蛇行する川と渓谷を楽しむことができる一方で、度重なる水害を経験してきた地域である。繰り返し襲う水害により、多くの家屋や田畑が被害を受けてきた。現在、鷲敷地区ではかさ上げ工事が、加茂谷地区では堤防建設の工事が進行中である。

集落や田園風景がゆるやかに広がる下流域は、典型的な三角州扇状地である。そのため、急峻な山の間を縫うように流れる上・中流域とは異なり、高低差も少なく川幅も広くなる。この下流域では、昭和4(1929)年に那賀川改修工事計画が支流も含めて立てられ、築堤や拡幅による改修が行われた。その結果、昭和3(1928)年に竣工した増田淳設計の那賀川橋にはコンクリート橋の継ぎ足しが行われている。

このように、様々な改修工事を行いながら、徳島県下で吉野川に次ぐ第二の<骨格>として流域地域の生業を支え、数多くのインフラを支えている。(尾野)

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参考文献

内務省神戸土木出張所:那賀川改修工事計画概要.
内務省土木試験所編:本邦道路橋輯覧,1928.

種別 河川
所在地 徳島県那賀町 勝浦町 阿南市 小松島市 美波町
管理者 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所
橋の博物館とくしま
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